2023.02.14 賃上げを経済成長の好循環へ、経産省が機運づくり 2月下旬には中小企業と対話

賃上げに積極的な企業と意見交換する西村経産相=東京都千代田区

西村経産相(中央)は賃上げに積極的な企業の社長らと意見を交わした=東京都千代田区西村経産相(中央)は賃上げに積極的な企業の社長らと意見を交わした=東京都千代田区

 2023年の春闘(春季労使交渉)が本格化する動きを前に経済産業省は、賃上げで経済成長の好循環をつくる機運づくりに乗り出した。西村康稔経産相が、賃上げに積極的な企業の首脳を東京都千代田区の同省に招いて車座で意見を交わし、こうした取り組みを後押しする姿勢を強調。2月下旬には、雇用の約7割を占める中小企業と対話する機会も設け、得られた声を政策の検討に生かしたい考えだ。

 「賃上げにより優秀な意欲のある人材が集まり、それがイノベーションを起こし、成長につながる。そしてまた賃上げが可能になるという好循環をつくることが重要だ」

 西村経産相は10日に行った意見交換で、デフレ経済などを背景に人件費を抑制する動きから発想を転換する必要性を強調。人材を「成長のエンジン」に変えるという発想で賃上げに取り組む動きが産業界に広がることに期待感を示した。

 意見交換には、三菱自動車や総合エンジニアリング大手の日揮ホールディングス(HD)、生活用品大手のアイリスオーヤマ(仙台市)、家具販売大手のニトリホールディングス(HD)など7社が参加。優秀な人材の争奪戦が激化する中で各社の社長らは、賃上げを人材確保につなげることに前向きな姿勢を示した。

 アイリスオーヤマの大山晃弘社長は4月から、定期昇給と賃金体系を底上げするベースアップを合わせて5%の賃上げを行うと表明。さらに賃上げの理由に触れ、「国内の製造を増やしており、より優秀な人材を獲得しなければならない」と述べた。採用力の強化につながる賃上げを自社の競争力や成長力につなげる考えも示した。

 ニトリHDの白井俊之社長も、人材投資を「将来への投資」として重視する考えを述べた上で、労働生産性を高めることに意欲を示した。

 物価上昇が続く中、従業員の生活を支援しようと昨年12月に「特別支援金」を支給した三菱自。同社の加藤隆雄社長兼最高経営責任者は「消費者物価の動向や人材確保をどうしていくのかという観点から、次の賃上げも考えていきたい」と説明。また、日揮HDの佐藤雅之会長は「処遇改善は先行投資」とした上で、「社員には今まで以上の成長と活躍を強く期待しているというメッセージを繰り返し伝えている」と話した。