2020.01.29 【水晶デバイス】市場動向

水晶振動子の生産実績推移

 水晶デバイスは、次世代高速通信規格5Gによって需要が伸びる見通し。5Gの本格運用に伴い基地局などのインフラ投資による需要が立ち上がるほか、5G用スマートフォン向け、さらにはIoTや自動車などへの波及効果による需要の創出が期待されている。

 また、自動車分野は生産台数の伸びが低調ながらもADASをはじめ、自動運転に向けた安全系機能の強化などによる搭載点数の増加が需要を押し上げる。

5G向け需要に期待車載向け
搭載点数増で拡大へ


 水晶デバイスの需要はここ数年、自動車とスマホにおける生産台数の増加と多機能化による搭載点数の増加によって拡大してきた。

 水晶デバイスメーカーは、これまで主力だったPCや薄型テレビ、デジカメなどの生産が低調に推移。各社ほぼ例外なく、自動車とスマホを両輪にした成長戦略を展開する。

 しかし、18年後半から過剰な設備投資による在庫増、米中貿易摩擦の長期化などによる世界経済の減速などで、スマホ生産の伸びが鈍化した。

 自動車も中国における販売台数がマイナスに転じ、しかも欧州も同年10月から新燃費基準が始まるなどで販売が減速。こうした動きは水晶デバイス市場にとっても影響を受けた。

 20年の水晶デバイス市場で期待されるのは5Gが徐々に動きだすこと。通信分野は、データトラフィックの増加や高精度の動画伝送の普及などによる大容量化、高速化さらには低遅延化、多目的同時伝送といった特徴を有する5Gの本格運用が世界各国で始まる。

 5Gへの設備投資は緩やかだが19年から始まっており、今年以降、本格的な設備投資が加速していく。通信インフラ分野における高精度、高安定の水晶デバイスの需要が見込める。

 さらに5Gは、ADASや自動運転などに向けて動きが活発化していることから、高品質の車載用水晶デバイスの新たな需要を創出する。また、5GはIoT、AI(人工知能)などと連携して、様々な端末を創出するとともにスマートファクトリー、スマートメディカルおよびヘルスケアなど、広く新しいサービスを提供し、水晶デバイスの市場を拡大する。

 水晶デバイス市場をけん引してきた自動車は今後、これまでのような右肩上がりで世界生産台数が伸びることは期待できないが、水晶デバイスの搭載点数の増加が車載用の需要を押し上げる見通し。

 自動運転の実用化を視野に入れて、ADASの搭載車が高級車から小型車まで広がっている。車載カメラやミリ波レーダーなど、安全運転の支援システムが水晶デバイスの需要を押し上げる。


【水晶デバイス】目次

●市場動向
技術動向
日本電波工業