2020.01.29 【水晶デバイス】技術動向
5G関連インフラで需要が伸びる高精度、高安定のOCXO
新システム導入活発
小型、高精度、高安定を追求
水晶デバイス市場は車載や5G、IoTなどによって、これまで以上に小型で、高精度、高安定を要求している。そのためにキーマテリアルである人工水晶からプロセス技術まで、新たなシステムの導入が活発化している。
人工水晶は、特性のバラツキがない高品質な水晶ブランクを育成するための技術開発が行われた。
しかもウエハーサイズは大きくして生産性を向上するとともに、超小型化と高周波化対応のためにこれまで機械加工だった前工程にフォトリソグラフィ技術を導入。
組み立ても自動化、ロボット化で小型、高精度化への新たな技術が導入されるなど、水晶デバイスの生産形態が大きく変化し、これからの高難易度な技術ニーズへの対応が可能になった。
5G用水晶デバイス
5G用スマホは、多機能化による小型、薄型化とともに、通信品質の向上を目的とした周波数の高精度化、低ノイズ化、通信データ量の増加、画像の高品質化による高周波化の動きを強めている。また、電池の長寿命化による低消費電流化が進められている。
基本的にはパッケージの小型・薄型化。温度センサー内蔵水晶振動子では、1612サイズで厚みが0.45ミリメートルまで超薄型化した。さらに1210サイズへの小型、薄型化技術が進展している。
1210サイズ開発
TCXOの場合もセラミックパッケージの薄型化、水晶チップの小型化、封止技術の高度化などによって1612サイズまで小型化しているが、新たに1210サイズが開発された。
アプリケーション用クロックでは、水晶振動子で1210サイズ、クロック用発振器としては2016程度まで小型化。
さらに音叉型水晶振動子は1610サイズ、RF用の高精度水晶振動子は1210サイズへと小型化シフトしている。最近では1008サイズまで小型化を実現している。
また、5G用端末向けに、加速度感度0.1ppb/G以下という低感度を実現し、通常の発振器と比較して約10倍の性能となる振動の低感度特性を実現したTCXOなども開発された。
5G基地局用や高速、大容量化のための光通信といった通信インフラ分野では、高精度、高安定、高信頼を小型化で実現している。
小型化については、ツイン基準用と温度センサー用の水晶振動子を一つのパッケージに格納したツイン水晶振動子が開発された。この技術を使って、デジタル信号処理を組み合わせたツイン方式を取り入れたOCXOやTCXOを提案する動きも始まっている。
高安定TCXOでは、マイナス40-プラス105度の広温度範囲でプラスマイナス100×10-9の温度特性を実現。しかも位相雑音特性97dBc/ヘルツ(離調周波数10ヘルツにて)および位相ジッタ112fs(12キロ-5メガヘルツ)。サイズも7.0×5.0×2.0ミリメートルと小型で低背だ。
各社は、当面5Gのインフラ設備投資や5G用端末の開発の動きを詳細につかみ、ビジネスチャンスを獲得する取り組みを地道に展開することになる。
車載用水晶デバイス
カーエレクトロニクスは、機能や用途からパワートレイン系や車両制御系、ボディー制御系、情報通信系の四つに分類できる。
その中で、水晶デバイスにとっては、車の基本性能である「曲がる」「止まる」をコントロールする役割を担う車両制御系、車の「安全」「快適」を向上させる機能を有するボディー制御系への需要依存度が高い。
多くの車載システムを制御するための電子制御ユニット(ECU)は、マイコンやソフトウエアが搭載されている。マイコンには制御するクロック信号が必要。このクロック信号の発振源として、発振回路に必要な電子部品がタイミングデバイスであり、水晶デバイスが使用されている。
ECUの搭載点数は、92-93年では30個程度だった。その後、車載機能が増え続け、最近の高級乗用車ではECUが100個以上搭載されるようになっている。
ADAS搭載進む
今後、自動運転の本格的な実用化に向けた動きが活発化。現在では、ADASの搭載が進展している。ミリ波レーダーや車載カメラなどの搭載に伴う水晶デバイスの需要が増加する。
車載用水晶デバイスに共通して要求されるのは、高温対応や耐振動・衝撃といった自動車特有のもの。特に耐熱性や耐衝撃性に関しては厳しい規格要求がある。
例えば熱衝撃試験では、一般民生機器試験条件(マイナス40度、プラス85度、100サイクル)で保証可能だが、車載用試験条件の場合、マイナス40度、プラス125度、1000サイクルを保証する仕様もある。
しかも、最近では高機能化によって室内空間が狭くなるため、ECUをエンジンルーム内に移設するなどの設計が施されるようになった。そのため、より高い信頼性が要求されるとともに、ECUの小型化に対応して水晶デバイスへの小型化シフトの要求が強まっている。
08年ごろの車載用水晶振動子では、3225サイズ程度が最小サイズだった。その後は、さらに高密度実装化を進展させてECUを小型化。2520サイズ、2016サイズ、1612サイズへと小型化してきた。