2023.02.28 【複合機&プリンターソリューション特集】商業印刷

富士フイルムBIは顧客向けイベントでスマートファクトリーを紹介。AGVが搬送する自動化のデモを行った

コニカミノルタは印刷市場の新たなサービス領域を提案コニカミノルタは印刷市場の新たなサービス領域を提案

エプソンはデジタル捺染市場拡大に積極的に取り組むエプソンはデジタル捺染市場拡大に積極的に取り組む

デジタル化転換を支援

小ロット多品種などに対応

 商業印刷市場でも、アナログからデジタルへの転換が本格的に始まった。ネット購買率が上昇し、ニーズの多様化で小ロット多品種化が加速、印刷物の需要動向が大きく変化してきた。一方、商業印刷ビジネスは、慢性的な人材不足に加え、昨今の原材料の高騰も大きな経営課題。商業印刷の市場規模は、年々減少傾向にあるが、デジタル印刷はこれからの成長分野として期待が高まっている。現在、約10%のデジタル印刷の市場規模も今後拡大が必至。デジタル化技術で強みを持つ事務機各社では、ソリューション提案など活発化させている。

 現在の商業印刷の市場規模は、約4兆9000億円規模とみられている。市場は1991年の約9兆円をピークに減少傾向にある。印刷市場は、大量生産を前提としたオフセット(アナログ)印刷が主流。こうした中、デジタル印刷は、消費者の価値観の多様化に伴う小ロット多品種のニーズに対応できることから、堅調に推移。今後も成長が見込まれている。

 事務機各社では、厳しい環境下にある商業印刷業界に対して、「省力化」「小ロット多品種化」「新規需要創出」への対応を支援する。

 富士フイルムビジネスイノベーション(富士フイルムBI)は、商業印刷業界の収益構造改革を支援するグラフィックコミュニケーション事業のデジタルトランスフォーメーション(DX)戦略を強化している。同社では、「Add value from DX」をコンセプトに「パートナー企業と連携して、DXエコシステムを構築し、印刷業界およびブランドオーナーへDXサービスを提供していく戦略。

 同社グラフィックコミュニケーション事業本部の鈴木孝義DX推進事業部長は「アナログ印刷が減少する中で、DXにより新しい時代に対応した業務改善を、環境問題も含めて提案していく」と話す。

 具体的には「スマートファクトリー」「マーケティングDX支援サービス」を提案、「最適コストで効率的な生産環境の構築の実現、新規需要創出のために印刷ビジネスを起点にした付加価値提案を行っていく」と強調する。

 また、来年には義務化される電子帳簿保存法や、今年の10月に導入されるインボイス制度などに対応、「トランザクションDXサービスなどに注力する」と鈴木部長。27日からTOKIUMの請求書クラウドサービス「TOKIUM インボイス」をサービスとして提供開始した。

 スマートファクトリーは、大量印刷を前提とし、オフセット印刷を中心とした従来の生産環境の課題である①各工程が個別に管理され全体最適の観点を持った工程管理が困難なこと②各業務が熟練技術者に依存(属人化)して標準化が困難③時間と手間を要する工程間作業の可視化・管理が困難、などの解決を目指す。

 「Revoria One Production Cockpit」により、さまざまなメーカーの設備からなる生産工程の進捗を、統合的に可視化・分析して、工程改善を図る。

 「最大40%の工数削減を実現できる」と同社。

 もう一つが、顧客接点(店舗・Webサイト・デジタル広告など)から得られるデータを統合、可視化、分析し、企業のマーケティング領域のDXを支援する「Marketing Cockpit」。同社のクラウド上に開発したシステム基盤を使い、データの統合・可視化・分析をサービスとして提供する。

 コニカミノルタの国内販売会社、コニカミノルタジャパンでは、商業印刷ビジネス(プロフェッショナルプリント事業)で、「創注・受注拡大支援」と「生産性向上支援」の2軸でDXを推進、印刷業界のビジネス成長と収益力向上を目指している。

 受注拡大ソリューションでは、ブランドオーナーをはじめとする印刷物を活用する発注者視点で、デジタル技術との融合・活用によるプロモーションの効果の最大化や、印刷物の価値を再創造し新たな印刷ジョブを生み出すことで、発注者および印刷会社双方のビジネス成長にも貢献するソリューションを展示した。

 また、印刷業務効率化ソリューションでは、受注から出荷までの全ての工程の自動化・効率化を推進してコストを最適化することで、印刷会社の利益の最大化と持続可能なビジネスを実現する。

 プロフェッショナルプリント事業部の内田剛事業支援統括部商品戦略部部長は「印刷業界において、ビジネス全体のDXの必要性が高まっている。デジタルを活用した〝創注〟への取り組みと、印刷から出荷までの生産プロセス効率化の2軸のDXで、印刷会社の利益の最大化を目指す」と強調する。

 リコーは、基幹業務印刷システムとして高い生産性を実現する高速インクジェット・プリンティング・システム「RICOH Pro VC40000」を投入。トランザクション市場向けのシステムとして、生産性や用紙対応力を強化している。また、業界最速クラスの毎分200枚の高速を実現した「RICOH DD 5650」を発売、大量印刷ニーズに対応している。

 国内販社のリコージャパンでは、商業印刷事業者のビジネス拡大を図るため、「デジタル化の推移による売り上げ拡大や企業価値向上に貢献するビジネスモデル」を提案している。

 印刷事業者のビジネス拡大を支援するために課題解決型活動を強化するため、「RICHO BUSINESS BOOSTER(リコービジネスブースター)」の国内展開している。

 「印刷事業者の課題ごとに、プロダクションプリンターや各種ソフトウエア、サービスとビジネスパートナー各社の機器、ソフトとサービスを組み合わせたソリューションを三つの軸で最適化して提供」(同社)する。また、専門組織として価値共創プロジェクトを立ち上げた。印刷事業者やビジネスパートナーと新たなソリューション開発に取り組んでいる。

 キヤノンは、プロダクションプリンター「imagePRESS(イメージプレス)」シリーズの旗艦モデル「imagePRESS C10010VP/C9010V」の新ユニットとして、検品工程を自動化するインスペクションユニット・A1と画像調整を自動化するセンシングユニット・A1を発売した。

 販売を担うキヤノンマーケティングジャパンでは「検品工程の自動化により印刷物の検査、印刷作業の大幅な省力化を実現する。印刷業界のDX化を支援するため、商品、サービスの充実」(同社)を図っている。

 京セラドキュメントソリューションズは、小ロット多品種の印刷需要にも対応したインクジェットプロダクションプリンター「TASKalfa Pro 15000c」が好評。「商業印刷における個々のカスタマイズ、オリジナルの大量印刷需要に対応」している。

大判プリンターが拡大 デジタル捺染市場に期待高まる

 プリンティング市場は、大判プリンターによる看板・装飾・サイネージなどに広がりを見せている。大判プリンターは、エプソン、キヤノンが力を入れて普及を図っているほか、業界レベルでもJMBIAが中心となり、市場拡大策を検討している。昨今、ラベル印刷市場も拡大傾向にある。

 さらに今後、期待されるのが、大判プリンターによるデジタル捺染(なっせん)市場。セイコーエプソンは、環境性能の高いインクジェット技術を使ったデジタル捺染技術に注力。ファッションデザイナー中里唯馬氏のYUIMA NAKAZATOとパートナーシップを締結、「デジタル捺染で表現の可能性を最大限に広げ、ファッションの進化に貢献」を目指している。

 デジタル捺染技術は、精細なグラデーションや微妙な色調の再現が可能であり、刷版を必要としないため小ロット短納期の生産に適している。また、水やインク、化学物質の使用量を大きく削減し、環境負荷を低減することが可能だ。