2023.03.29 【関西エレクトロニクス産業特集】 関西産業界を支援する官庁トップに聞く 近畿総合通信局 井上知義局長
井上 局長
デジタル田園都市構想を促進
地域のインフラ整備など
-地域の活性化を目指すデジタル田園都市国家構想が動き出しました。インフラ整備をどう進めていきますか。
井上局長 5Gの人口カバー率については2022年3月末時点で近畿管内において95.8%となっており、全国平均の93.2%を上回っている。引き続き「近畿デジタル田園都市国家構想推進協議会」において、地方公共団体、通信事業者、社会実装関係者などの間での地域におけるデジタル実装とインフラ整備のマッチングを推進し、整備の促進を図っていく。光ファイバの世帯カバー率も同時点で各府県99.9%を超える高い水準にあるが、地域の整備ニーズを引き続きくみ取っていきたい。
-デジタル田園都市国家構想も実証から実装の段階に来たということですか。
井上局長 ローカル5Gの普及促進のため、「近畿ローカル5G推進フォーラム」を2020年に立ち上げこれまで8回の会合を重ね、ユースケースの共有、現地視察を行ってきた。実証から実装フェーズへの移行が進み、実用化の無線局は管内の企業、地方公共団体、大学に対し、22件免許を付与した。用途に応じて柔軟に信頼性の高い5G通信環境が構築できることから、引き続き、特性を生かした普及を期待したい。このため、23年度開始の「地域デジタル基盤活用推進事業」を通じ、導入・計画策定、ローカル5G、Wi-Fi HaLowなどの新しい情報通信技術(ICT)を活用したソリューションアイデアの実証、地域の通信インフラ整備など、デジタル技術を活用して地域課題解決を図る地方公共団体や企業・団体への総合的な支援を行っていく。
-サイバーセキュリティー対策も喫緊の課題ですね。
セキュリティー強化
井上局長 社会全体のDX化の進展によりサイバーセキュリティー上の脅威が増大しており、管内のサイバーセキュリティー対策の強化に取り組んでいる。地域のセキュリティー人材の裾野拡大を目指し、関西サイバーセキュリティ・ネットワーク(関西SEC-net)を通じた学生、企業向けのセミナー開催や、医療機関を標的としたランサムウエア事案の発生を受けて管内の公立病院に対し、セキュリティー施策の説明会を開催している。
また、情報通信研究機構(NICT)を通じ、管内の地方公共団体、企業などへのインシデント発生を想定した実践的なサイバー防御演習「CYDER」の受講促進、不審な通信を自動観測しアラート情報を提供する「DAEDALUS」や脆弱(ぜいじゃく)なIoT機器対策「NOTICE」への参加も促進しているところだ。
-ICT活用の防災・減災への取り組みは。
南海トラフ見据え
井上局長 南海トラフ地震はおおむね100年から150年間隔で繰り返し発生している。前回の南海トラフ地震が発生してから70年以上経過した現在、次の南海トラフ地震発生の切迫性は高い。23年度においても引き続き、南海トラフ地震などの大規模災害に備えるため、陸上自衛隊第3師団との協定に基づき、陸路によるアクセスが途絶した場合を想定し、ヘリコプターによる通信機器などの搬送訓練などの実施を予定している。地方公共団体、地域住民参加型の実務的な共同防災訓練を行い、関係機関との連携をさらに強化していく。
既存の情報通信伝達手段に加え、南海トラフ地震の被害が甚大と想定される地域の通信環境の強化に向けて、NICTや地方公共団体などの関係機関と連携し、メッシュネットワークシステム(NerveNet=ナーブネット)活用の通信訓練を行っていく。
-大阪・関西万博が2年後に迫りました。
井上局長 大阪・関西万博は関西経済の起爆剤として期待は大きい。来場者やバーチャル万博会場など、あらゆる場面で未来コミュニケーション環境の創出を目指し、多言語翻訳システムの社会実装の推進や、Beyond 5G readyショーケースの展示に向けて、2025年日本国際博覧会協会との連携を図っていく。
また、万博会場付近の電波発射状況調査を実施し、会場整備期間中、重要無線通信妨害が発生しないよう電波監視を実施し、妨害発生時の迅速な排除に努めていきたい。