2023.04.19 「カシオの新しい軸を創る」増田裕一社長CEOに聞く

経営方針について語る増田社長CEO

午前3時半という早朝から生まれたステートメント午前3時半という早朝から生まれたステートメント

三つのステートメント実践
社員活性化で成長へ

 創業家以外から初のトップとして1日にカシオ計算機の社長CEOに就任した増田裕一氏。就任に際し、三つのステートメントを自ら作り、その実践でオンリーワンのポジションを目指す姿勢を打ち出している。「カシオの新しい軸を創る」と話す増田社長CEOに、目指す方向性について聞いた。

 ―2月の社長交代会見では「オンリーワンのポジションを目指す」と語っていました。

 増田社長CEO そこはぶれずに進めていく。社長に就任した4月以降、意見を聞いたり話したりする機会がさまざまあり、会見時からもう一段考えを深めているところだ。市場に新たな価値を創る、カシオだからできる新たな価値とは何かを考え、新しい価値を軸にブランドを築いていくことが必要だ。

 ―ブランドを創るために必要なこととは。

 増田社長CEO ブランドを創るには信頼が必要。信頼があるから大きなブランドになる。

 社内外への発信も重要だ。社員が活性化し、自発的に行動していくことが、会社の成長・発展につながる。そのためにも会社のビジョンやミッションを明確にし、現場で働く社員にも理解できる言葉で伝えていかなければならない。

 ―会社として目指すビジョンやミッションはこれまで策定していなかったのですか。

 増田社長CEO 経営理念である「創造 貢献」はあるものの、今の時代に合わせたビジョンやミッションは定義していなかった。策定に向けて横断的なプロジェクトを進めているところで、定義したビジョンやミッションが現場で働く社員にもしっかり伝わり、カシオの〝新しい軸〟を創れる力にしたい。

 ―〝新しい軸〟とは。

 増田社長CEO 例えば「G-SHOCK」。それまで時計は壊れやすいものだったが、そこに落としても壊れない時計という〝新しい軸〟を生み出した。それが価値となり、会社としての発展にもつながった。

 1980年から2000年ごろまで、カシオは今のスマートウオッチのようなコンセプトで、デジタル化を取り入れた時計の開発を進めてきた。ただ、20年間の売り上げは500億円から700億円を行ったり来たりの状態だった。しかし、G-SHOCKがブームになると一気に1500億円にまで拡大した。

 当時はプロダクトアウト型で価値を創っていったが、今はブランド化するまで育てることも重要。取り組み方を変える必要がある。

 ―これまでも新事業の創出に取り組んでいます。今後、事業の取捨選択も必要になりますか。

 増田社長CEO 新しい事業にチャレンジする自由は与えるが、期限を決めて、成果が見込めないようであれば事業を止める決断もしなければならない。これまではそういうルールがきちんとしていなかった。

 新たなチャレンジにしても、それが「正しいテーマ」であるかを見極めることが大事。間違ったテーマをやり続けると、そこに携わる社員が逆に犠牲になってしまう。

 ―これまでの経営方針とは変わりそうです。

 増田社長CEO 変えるところは変えなければならない。そのためにも社長就任時に三つのステートメントを作った。

 私は毎日午前4時半に起きるが、その1時間前の午前3時半ごろに目覚めてしまう。ステートメントは、起きるまでの1時間を使い、どういうマネジメントをやるべきかを考えて作った。

 社員の活性化と会社の成長は一体だ。30年に向けて中期的な経営ビジョンも示さなければならない。この一年をかけて、しっかり取り組んでいきたい。