2023.05.17 【世界情報社会・電気通信日のつどい特集】ITU電気通信標準化局長にNTT・尾上氏が就任

ITU電気通信標準化局長に就任した尾上氏

 電気通信分野の国連専門機関ITU(国際電気通信連合)の電気通信標準化局長に1月、NTT最高標準化戦略責任者(CSSO)の尾上誠蔵氏が就任した。通信ネットワーク分野の国際標準化に向けたルール形成の場で、指導的な役割が期待されている。

 昨年9月末に、ルーマニアの首都ブカレストで開かれたITU全権委員会議で行われた次期電気通信標準化局長選挙で、3候補の中から、日本政府が擁立した尾上氏が当選を果たした。

 ITU電気通信標準化局は、移動通信規格5Gや次世代のビヨンド5G(6G)など、技術革新が進む移動通信ネットワークの標準化を担う部門。尾上氏はこれまで、移動通信システムの業界団体で標準化と技術開発の両面で主導的な役割を果たしたほか、2017~21年には移動通信システムの研究開発を手掛けるドコモ・テクノロジの社長を務め、経営手腕を発揮してきた。

 ITU電気通信標準化局長に決まった昨年10月、ビヨンド5Gの推進に向けた国際連携を産官学一体で検討する「Beyond 5G国際カンファレンス2022」において、尾上氏が基調講演を行った。

 NTTドコモで数々の要職を歴任するなど国際的に通信技術の標準化に貢献し、「LTEの父」とも呼ばれる尾上氏は、2030年代の実用化が見込まれる6Gの国際標準化に向けて「標準化のやり方そのものが新しい技術に対応していかなければいけない」と強調した。

 また、これまでの通信の流れを振り返り、「移動通信ほど標準化が役に立っていることを示す典型例はない。第一世代で乱立する中から収れんし、競争原理が働いて値段が安くなった」と指摘。

 「4Gの段階で最終的にはUMBが断念され、LTEが標準になった」として、6G以降の標準化について「電力などさまざまな課題をクリアできれば、標準化の必要性から解放される時期が来るかもしれない」と述べた。6Gを推進する一方で、新しい技術に対応したフレームワークを進化させる努力が必要だと訴えた。

 データ通信が広がる中、6Gでは現行5Gの10倍以上の通信量が必要とされ、電力使用量の低減に向けた研究や、「HAPS」(成層圏を太陽エネルギーで飛び続けるグライダー型の中継基地局)の開発も進む。尾上氏の活動も含め、国際舞台での日本の地位向上も期待される。