2023.05.25 【日刊自動車新聞×日刊電波新聞】「自動車技術の最新トレンド」過熱するEVビジネス〈上〉

ここ数年でEV販売が急伸した(IEAまとめ)

EV展開にようやくかじを切った日本勢

 これまで中国や欧州などを中心に市場が拡大してきた電気自動車(EV)だが、ここにきて日本の自動車メーカーの動きが活発化してきた。この動きを受けて、今回の「人とくるまのテクノロジー展2023 YOKOHAMA」もEV関連の出展が目立つ。これまで欧米や中国に比べて“出遅れている"との指摘もあった日本メーカーだが、ハイブリッド車(HV)などの得意領域だけでなく、将来のEVシフトを見据えた新型EVの本格投入を計画。大きな成長が見込まれる日本メーカーのEV事業での受注獲得に向けて、自動車サプライヤーの提案合戦が熱を帯びている。

 これまで世界のEV市場をリードしてきた存在といえば米国のテスラだ。EVに特化した2003年設立の新興メーカーだが、パナソニックから調達した円筒形のリチウムイオン電池など独自設計により、高い動力性能とロングレンジの航続距離を両立。独自の充電インフラ整備や最新機能のOTA(オーバー・ジ・エア)アップデートなど、既存の自動車とは異なる価値観もヒットし、EV市場をけん引してきた。

 加えて世界のEVシフトを自動車の世界最大市場である中国が加速させている。富裕層をターゲットにしたテスラとは異なり、エンジン車より安価な移動手段として中国現地メーカーが相次ぎ格安EVを投入。購入補助金など政府のEV普及促進策も奏功し、一気に市場が拡大した。

 その結果、国際エネルギー機関(IEA)がまとめた22年の世界のEV販売台数は約730万台と前年比で59%増加し、このうち中国が約440万台(同60%増)と6割を占めた。急速なEV市場の拡大により中国では、EVとプラグインハイブリッド車(PHV)、燃料電池車(FCV)を合わせた「新エネルギー車」(NEV)の比率を25年に20%まで高める政府目標を3年前倒しで達成するなど、世界のEVシフトの旗振り役となっている。

 この中国のEVシフトだが、日本メーカーは乗り遅れたと言わざるを得ない状況となっている。中国汽車工業協会が発表した22年の中国の新車販売台数は、上海のロックダウンや「ゼロコロナ政策」などがあったものの、前年比2.1%増と2年連続で増加した。

 一方、ここ数年中国市場で販売を伸ばしてきた日本メーカーは、トヨタ自動車が同0.2%減、ホンダが同12.1%減、日産自動車が同22.1%減と低迷。中国ではEV向け補助金を22年末まで延長したことで駆け込み需要が発生し、EVの販売増が市場拡大の一因となった。販売を伸ばす中国の新興EVメーカーに対してホンダの青山真二副社長は「日米欧メーカーの出遅れ感は否めない」と述べ、日産のアシュワニ・グプタCOOも中国の販売低迷の要因の一つとして「EVをあまり出していなかったこと」を挙げる。

HVに強みを持つトヨタもEV世界販売を年150万台まで引き上げる計画を発表

 その日本メーカーもいよいよEVの本格展開にかじを切る。トヨタは先月、26年までに世界で10モデルのEVを投入し、EV世界販売台数を年間150万台まで引き上げる計画を発表した。ホンダも先月、26年としていた自社開発EVの北米への投入時期を1年前倒しすることを明らかにした。スズキも今年1月、今後7年間で日本・インド・欧州に合わせて17車種のEVを投入する計画を発表するなど、相次いでEV関連事業の強化を打ち出した。また、日本メーカー各社は今後のEV事業の拡大に向けて、世界各地で電池の調達体制の強化も進めている。

(日刊自動車新聞)

日刊自動車新聞とは

日刊自動車新聞ロゴ

日刊自動車新聞は、1929年(昭和4年)創刊の世界最大級の自動車専門紙です。日本の基幹産業である自動車にフォーカスし、最先端の製品や技術をはじめ、開発から生産、流通、サービス、アフターマーケットまで幅広い分野を取材。自動車業界の今を、新聞およびwebでお伝えしています。