2023.05.27 【日刊自動車新聞×日刊電波新聞】人とくるまのテクノロジー展2023〈注目の展示から〉エッチ・ケー・エス(HKS)

「HKS」の3文字が掲げられたブース。常に多くの来場者でにぎわっていた

老舗チューニングメーカーの高い技術と独創性

 「人とくるまのテクノロジー展2023 YOKOHAMA」の会場中央のブースに掲げられた「HKS」の文字。クルマ好きならこの3文字に見覚えのある人も多いのではないだろうか。

 エッチ・ケー・エス(HKS)は、静岡県富士宮市に本社を構える、1973年創業の老舗の自動車用チューニングパーツメーカーだ。主力事業としてエンジンパーツや電子制御部品、過給機、マフラー、サスペンションパーツなどのアフターパーツの設計・開発・製造を手がけている。

 その特徴は、高い技術力で、市販車向けチューニングパーツだけでなく、レース車両およびレースエンジンの開発なども行っており、自動車アフターパーツ業界きっての“技術屋集団"といえる。

 HKSが他のチューニングパーツメーカーと異なるのが、環境対応技術なども手掛けている点だ。独自のエンジン技術を応用して、大型トラック用CNG(圧縮天然ガス)エンジンを開発したり、ガソリンと天然ガスを併用できる独創的なバイフューエルエンジンなども展開しており、LPガスとガソリンのバイフューエルキットは日産自動車「NV200」のタクシー仕様車に正式採用された実績もある。

 ただ、主力のアフターパーツ事業は、エンジン関連サプライヤーと同様に、電気自動車(EV)をはじめとした電動化による影響が避けられない情勢だ。このため電動化時代を見据えたさまざまな技術や製品を開発している。

 今展では、ブースの最前列にEVトラック用の交換式バッテリーシステム「ExCVB」を展示した。これは2022年11月に開始した環境省が支援するバッテリー交換式EVトラックの実証実験に使用されている。

小型EVトラック用の交換式バッテリーパック。キャブ(運転席)と荷台の間に搭載する

 実証事業は伊藤忠商事、いすゞ自動車、ファミリーマート、JFEエンジニアリングに加えてHKSも参画しており、バッテリーパックの開発を担っている。アフターパーツメーカーのHKSがバッテリーパックの開発とは意外だが、バッテリーパックの制御は「エンジンのマップ制御と似ていて、これまでのノウハウが応用できる」(担当者)という。

 さらに、EVの駆動用電池の残存性能を診断するシステム「OB―リンク ビルズ」を開発し、公開した。二次電池の試験装置の開発などを手掛ける東洋システム(福島県いわき市、庄司秀樹代表)と共同で取り組んだもので、急速充電中に車載故障診断装置(OBD)ポートにデバイスを接続することで、駆動用電池の状態をチェックできる。

 データの読み出しにかかる時間は30秒で、同社によると世界最速という。診断データをクラウド上に送信して解析。数分でスマートフォンやパソコン上で数値化した診断結果を確認することができる。同システムは年内をめどに市場投入する計画で、中古車を取り扱う事業者などへの販売を想定している。

 急速なEVシフトは自動車産業の構図を大きく変えると言われている。ただ、HKSの展示は、独創的なアイデアや優れた技術力の価値は不変であると示していた。EV時代でも技術屋集団ならではの提案が期待できそうだ。

(日刊自動車新聞)

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