2023.05.26 【育成のとびら】〈3〉2~4年目社員の離職予防と早期活躍を実現するには

難しい仕事は「成長の機会」と捉える

壁は取り除かない

 まぶしい新緑の季節も終わりを迎えようとしている。真新しい装いで先月入社してきた新入社員も、新しく入った組織に適応していくプロセスである「組織社会化」への道のりを歩み若手社員の一員になっていく。

 この若手社員という言葉に定義はないが、一般的には入社2~4年目の社員を指すことが多い。この時期の早期離職率の高さが問題になっていること、年功序列型人事制度から脱却し「早期リーダー育成」に取り組む企業が増えていることを考えると、2~4年目社員の育成はいまや企業にとって重要経営課題の一つといえるだろう。

 そこで今回は、ほかの階層と比較しフォーカスされることが少ない2~4年目社員にあえてスポットを当て、当社ラーニングエージェンシーが2022年7月に行った若手社員900人の意識調査結果を基に、彼らの価値観や傾向をひもといていく。

 調査では対象者を「離職意向」の有無で分け、両方に「仕事で壁を感じた場面」と「その壁をどう捉えたか」を質問した。その結果、各年次で異なる傾向が見られた。中でも各年次で離職意向の有無により回答に最大の差が出た項目に注目したい(図1)。

知識・スキルで壁

 まず2年目で既に離職意向を抱いている社員は、多くが「知識・スキル」面で壁を感じており、特にビジネスライティング(ビジネスで必要となる文書を書く力)など日常業務スキルに悩んでいることが分かった。

 次に3年目社員は離職意向がある社員の約7割が仕事の量に悩んでおり、「今後のキャリアが描けない」という回答も多かった。最後に4年目社員は離職意向によって「職場の文化が合わない」と感じた経験の有無に最も差が出る結果となった。

 眼前の業務遂行に不安を抱いていた2年目社員が、3年目には自身の仕事量やキャリアに目を向け、4年目には職場全体まで意識が及ぶに至るこの回答結果は、若手が一人前の社会人として「自立」する過程を表しているようで面白い。

 企業は、例えば3年目へのアサインメント(業務の割り当て)では仕事の量に配慮するなど、各年次の異なる価値観を理解し、適切にフォローするよう心がけるべきだろう。

 ここまで2~4年目社員の「異なる価値観」を紹介してきたが、最後に彼らが「ある共通の価値観」を持っていることにも触れておく。それは彼らが「難しい仕事」に直面した時の価値観についてだ。

 難しい仕事へ挑戦する場面に対し、なんと2~4年目の全年次で「成長の機会」「期待に応えたい」という声が圧倒的に多かったのである(図2)。

 2~4年目の社員は自立の過程でさまざまな壁に直面する。しかし、企業が行うべきは「壁を取り除く」ことではない。なぜなら、彼らは「壁を乗り越え成長する」機会も欲しているからだ。

理解し支援を

 新緑の季節が過ぎ、緑が深まる季節がやってくる。伸び盛りの若い葉をどう大樹に育てるか--。彼らの壁を理解し、彼らが壁を乗り越えられるよう支援することが企業には求められている。(つづく)

 〈執筆構成=ラーニングエージェンシー〉

 【次回は6月第2週に掲載予定】