2023.06.05 【エコファースト企業~環境の日~特集】東レエンジニアリング LiB電極用塗工装置、排ガスから溶剤回収し再利用

エネ消費を大幅に減らしたLiB電極用塗工装置

 東レグループの東レエンジニアリング(TRENG)は、カーボンニュートラル社会の実現に貢献するため、環境性能の高い製造技術の開発・展開に力を入れている。

 リチウムイオン電池(LiB)電極用の塗工装置はウエハー検査装置と並び、同社の業績をけん引する主力製品の一つ。排ガスから有機溶剤を回収して再利用し、エネルギー消費量を大幅に削減する製造装置を訴求する。

 LiBの電極製造では、電極材料と有機溶剤を混ぜた塗液(スラリー)を塗工装置で金属基材に塗布する。塗液は外気をヒーターで加熱して生成した熱風で乾燥させるが、塗液に含まれる有機溶剤は揮発して可燃性ガスとなるため、濃度を基準以下に管理する必要がある。乾燥で使用した空気を排気後、再び外気を取り込んで昇温し、乾燥に用いる。LiB製造工程の中で、こうした乾燥・溶剤回収に要するエネルギー消費量は全体の半分を占め、低減することが課題となっていた。

 TRENGが開発した「グリーンコーター」は、乾燥炉と有機溶剤回収装置を一体化したLiB電極用塗工装置。溶剤を低濃度化することで、乾燥に用いた空気を再利用できる。

 乾燥炉から出てきた排ガスは熱交換機で熱を回収。有機溶剤は冷却装置で冷やして液化してから回収する。濃度が低下した空気は循環し、再びヒーターで加熱して乾燥炉へ供給。加熱に要するエネルギーを大幅に削減できる。

 従来の熱交換機の熱回収率は約40%だったが、グリーンコーターは約55%に向上した。排気ガスは95%再利用でき、LiB製造の乾燥工程で消費するエネルギー量を従来比で25%削減可能だ。

 EV(電気自動車)化の進展に伴い、LiB電極用の塗工装置の需要は増加。欧州域内でもLiB製造拠点の新設・増設が相次ぐ。独ミュンヘンに子会社を設立して欧州でのサービス体制を強化するなど旺盛な設備需要に対応しつつ、脱炭素社会の実現に寄与する。