2023.07.11 【家電総合特集】環境配慮とユーザーニーズ 各社、両立へ商品開発進む

市場ニーズに迅速に対応すべく、国内でのモノづくり力強化が重要になっている

 2023年度の国内家電市場は、前年を割り込む形で推移すると見られている。コロナ過で巣ごもり需要が拡大するなど、需要を〝先食い〟した反動が出るという見立てだ。

 短期的に厳しい推移が予測されるが、国内家電メーカー各社は多様化するライフスタイルに応えるモノづくりを進め、需要創造に力を入れる。

 また、長期的な視点で見れば、国内市場では人口減少や高齢化に伴うさまざまな社会課題や、カーボンニュートラルの実現に向けた地球環境問題の解決につながるサービス・ソリューションの開発も重要だ。

 メーカー各社にとっては、環境配慮と事業拡大の両立を図ることが、持続的な成長に不可欠な視点となっている。

 環境配慮と同時に、ユーザーのニーズにきめ細かく対応した商品開発が求められていることから、国内での研究・開発・生産体制の強化に改めて動き出すメーカーもある。

 ユーザーが求める商品開発を迅速に行い、素早く市場投入するには、市場に近いところでのモノづくり体制の強化を図る必要があるためだ。

 パナソニックは先頃、国内向けルームエアコンの研究開発・生産体制の強化を発表した。生産については、24年度に国内ルームエアコン販売台数の4割を滋賀県の草津拠点で行うという。

 省エネ性能の高い中・高級エアコンの生産を中国から移転し、生産体制の効率化にも取り組みながら、高まる国内の省エネニーズへの迅速な市場対応を図る考えだ。

 国内市場では、カーボンニュートラルを目指す一環で、住宅の省エネを実現する、断熱性能の高いZEH(ネット・ゼロ・エネルギー住宅)の普及が急速に進展。

 これを見据えたZEH対応エアコンを国内住宅メーカーなどの顧客と協働で開発するため、国内研究・開発体制も大幅に強化した。

 また、同社の白物家電では、顧客のニーズに刺さる特徴的な新製品開発に向け、商品企画、技術、開発、製造、デザイン、マーケティング部門に至るまで関連した部門を有機的に連携させるME(マイクロエンタープライズ)制を導入するなど、さまざまな角度からモノづくり力の強化に取り組んでいる。

 こうした例を見ると、地政学リスクの回避という意味合いもあるが、国内モノづくり体制全体を再構築するという意味合いの方がより強い。

 マーケットに近いところで顧客ニーズ・市場トレンドを的確につかんで先行商品の開発につなげ、迅速に市場へ投入して成長機会を呼び込む。メーカー各社は今後、さらにモノづくり力に磨きをかけていく。