2023.07.11 【家電総合特集】東芝ライフスタイル 小林伸行取締役社長

製品の魅力や込めた思い発信

IoT家電の利点の提案も

 夏商戦の状況は好調とは言い難い。家電以外の消費が強まっていることも要因になっている。物価高で単価は上昇傾向にあるが、それは本来の需要通りのものではない。

 新型コロナ下の巣ごもりで一時的に増えた需要の反動が出ることはある程度予想済み。今は電気代が高騰していることから省エネ・節電につながる家電への関心が高い。

 当社もシェアを着実に伸ばしているエアコンで、付加価値の高い省エネ機種の提案を強化しているところだ。特に高級機から標準機までマイディアグループ(美的集団)の技術を生かしたエアコンをそろえることができた。上位機種の販売構成比を高めるために戦略的に取り組んでいる。

 4月から営業責任者とマーケティング責任者を組織的に分けた。当社製品の魅力や製品に込めた思いなどを市場や消費者にメッセージとしてもっと発信できるようにすることを目指した。

 エリアに合わせたマーケティング活動が重要になる中、まずはトータルで販促物や表現などにメッセージ性を持たせる必要があると思っている。

 家電のIoT化は、利点をまだ消費者に伝えきれていない。単にIoT化を訴求しても普及にはつながらないため、長く快適に使ってもらうためのサポートに生かすなど、新たな取り組みが必要だと考えている。

 例えば、長く使える家電であっても当初の性能からは落ちていることも少なくないが、そうしたことにユーザーは気づかないことが多い。それをプッシュ通知で知らせてあげることで、現状を認識するとともに、場合によっては買い替えにつながり、新たな価値の提案となる可能性もある。IoT家電を使いたくなるような利点をもっと提案できるようにしたい。

 今年は下期も市場の厳しさは続くだろう。家電の需要はすぐには回復しないはずだ。そうした中でも販売につなげるためには、顧客に製品の価値をしっかりと伝え、本当に必要な正しい家電を選んでもらう提案力も大事になる。

 現状は電気代を筆頭にエネルギーコストが高く、それを減らす訴求が変わらず重要だ。エアコンや冷蔵庫を中心に省エネ・節電の訴求は最も重視していくテーマになる。

 ただ、コロナ下で想像していたコロナ明けの状況と今はまた大きく違うはず。家電に対する顧客の考え方や環境はどんどん変化しており、これからもそうだろう。そうした中で当社は、新たなカテゴリーの製品を展開することも検討していくが、主力6製品(エアコン、冷蔵庫、洗濯機、オーブンレンジ、炊飯器、掃除機)を軸にした戦略を推進する。