2023.07.11 【家電総合特集】テレビ

高画質・大画面の需要が強い

迫力ある大画面を楽しむ一つの要素として、音響技術も重要迫力ある大画面を楽しむ一つの要素として、音響技術も重要

ミニLEDなど高画質化進む

視聴スタイル変化、大画面の良さ訴求

 国内のテレビ市場は、新型コロナ下の巣ごもりや東京五輪開催に伴う買い替え需要が発生していたものの、2023年の市場は落ち着きが見られる。そうした中でも、4Kテレビを軸に有機ELや量子ドット搭載テレビなど、さらなる高画質化を追求した付加価値の高いモデルが市場をけん引する。動画の視聴スタイルが多様化する中、需要を喚起するためにも、家庭内におけるテレビの価値をいかに訴求していくかがメーカー各社には求められるところだ。

 27年には、日本のテレビ需要全体における4K化率が6割を超える-。これは電子情報技術産業協会(JEITA)が公表した、27年までのテレビ需要などを予測したものだ。日本ではテレビ需要全体は減少するとされているが、4K化率は現在の5割超(23年1~5月累計)から上昇するとの予測を示す。既に市場の5割を超えた4Kテレビは、価格帯の選択肢が広がり、大画面・高画質でも存在感を発揮する。

 4K有機ELテレビはその代表格だ。従来、平らなガラスに蒸着していた有機EL発光層をマイクロレンズアレイに蒸着した新型を、パナソニックやLGエレクトロニクス・ジャパンが製品化している。微細なマイクロレンズアレイを搭載して光を効率よく取り出せるようにしたことで、輝度を大幅に高めているのが特長だ。消費電力を上げることなく明るさを高めている。コントラストのはっきりした有機ELの特長をさらに高めたモデルと言える。

 4K液晶テレビでは、バックライトにミニLED技術を採用する動きが本格化している。この技術はその名の通り、小型なLEDをバックライトに利用し、エリアに分けて緻密に制御することで明暗をはっきりさせて高画質化につなげるものだ。

 パナソニックが同社初のミニLED搭載品を今月発売予定など、液晶テレビの高画質化を実現する技術として各社から製品化が相次いでいる。シャープがフラグシップに位置付ける「AQUOS XLED」シリーズもミニLEDで高画質化を図っている。鮮やかな映像表現につなげられる量子ドット技術の実装も進んでおり、有機ELと液晶における高画質化競争が盛り上がりを見せる。

 こうした高画質化が威力を発揮するのは大画面。市場でもその傾向は顕著で、22年(1~12月)でテレビ出荷全体に占める50型以上の構成比は約4割となっている。毎年構成を増やしている形だ。

 動画視聴スタイルの変化で、若年層をはじめ「テレビ離れ」が指摘されている。いつでも好きな映画やドラマ、アニメなどが視聴できる動画配信サービスは、テレビのリモコンからワンボタンで直接サービスを起動できる機能をテレビ各社も搭載するほど、無視できない存在になっている。デジタルネーティブな世代ではスマートフォンやタブレットが当たり前のように身の回りにある上、今や地上波以外の動画があふれている。視聴デバイスへのこだわりは減っているからこそ、大画面による迫力ある視聴環境の訴求は重要になる。

 そうした大画面の良さを最大化するために、音と合わせて没入感を高めることを目指してTVS REGZAが採用したのがミリ波レーダーだ。同社は4月、業界でもいち早く4Kテレビの新型を発売。その新型に搭載したのが、ミリ波レーダーを使って視聴者の位置を特定し、視聴状況に合わせて画質と音質を最適化する技術になる。新開発した画像処理エンジンを組み合わせることで、テレビの距離に適した画質と視聴位置に合わせた音場を作れるようにしている。

 大画面・高画質化競争は激しさを増す半面、今年の市場は巣ごもりによる需要の先食いが響いている。同時に、レジャーやサービスなど家電以外への消費傾向は顕著に出ており、JEITAは今年、483万8000台の市場規模を予想。消費支出の傾向や視聴デバイスの多様化と合わせて、需要の上振れは期待しにくい状況だ。

 そうした中、各社に求められるのは、テレビの新たな使い方の提案になる。壁掛けや移動ができるフリースタイル、据え置きだけでないパソコンゲームでの利用など、大画面を生かせる訴求が重要性を増す。シーン提案での需要の掘り起こしも不可欠になってくるはずだ。