2023.07.14 【電子部品技術総合特集】脱炭素/カーボンニュートラルへ

再生可能エネルギーの導入拡大が進んでいる(TDKの浅間テクノ工場=長野県佐久市)

電子部品各社の6割強が再エネを導入
カーボンニュートラル達成時期目標 多くが2050年までに設定

 電子部品メーカー各社は、ESG経営の重要性が増す中で脱炭素/カーボンニュートラルへの取り組み強化に努めている。地球環境の保全要求に対応した事業活動として、省エネ・省資源・リサイクルの追求、RoHS指令をはじめとする環境負荷物質規制への対応、環境配慮型製品の開発、再生可能エネルギーの活用拡大、工場のスマートファクトリー化による使用電力量削減など、さまざまな観点から環境に優しいモノづくりを進める。

 気候変動問題への対応は、世界共通の重要課題だ。特に2020年以降、世界各国で「カーボンニュートラル達成に向けた中長期目標」が打ち出されている。日本も、20年10月に当時の菅首相が「50年までのカーボンニュートラル達成」を宣言し、21年には「30年度に、温室効果ガス(GHG)を13年比で46%削減することを目指す」という目標が表明された。

 最近は、米国系IT企業や欧州系企業などをはじめとして、部品サプライヤーに対するカーボンニュートラル関連の要求事項が厳しさを増しており、中長期ロードマップの中で、30年までにサプライチェーンを含めたゼロカーボンを方向付けている完成品企業も見られる。

 こうした動きに呼応して21年以降、「カーボンニュートラル達成時期目標」を策定・公表する電子部品企業が増加しており、その達成のための中長期の環境ロードマップ策定が進展している。TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言に沿った情報開示や、「RE100」宣言に向けた取り組みなども進んでいる。

 20年12月に発表された、50年カーボンニュートラル実現に向けた政府の「グリーン成長戦略」では、14の重要分野が設定された。14分野には「自動車・蓄電池産業」「半導体・情報通信産業」「住宅・建築物産業/次世代型太陽電池産業」などが含まれる。

環境配慮型の製品

 電子部品技術は、さまざまな産業分野の省エネ・高効率化を促進するイノベーションの源泉としても重要視される。そのため各社は、機器や装置の高効率化に寄与する環境配慮型製品の開発に全力を挙げている。

 電波新聞社が主要電子部品メーカーを対象に実施したアンケートでは、「自社のオペレーションでの再生可能エネルギーの活用の有無」についての質問に対し、回答33社中、6割強の21社が「導入済み」と回答した。「近く導入予定」「導入を検討中」を合わせると計28社で、全体の8割以上に達する。

 「カーボンニュートラルの達成時期目標」を聞いた質問では、回答30社中、5割の15社が「達成時期の目標を設定済み」と答え、「近く目標を設定する予定」とした企業も5社を数えた。

5割が目標設定済み

 「カーボンニュートラルの達成時期目標を設定済み」の企業に対して「達成時期目標」を尋ねたところ、多くの企業が「2050年まで」としたが、「2030年まで」と回答した企業もあった。

 電子部品各社が推進するSGDs(持続可能な開発目標)への取り組みでも、中核の一つに「環境対応」が位置付けられている。各社は、製品の企画・開発から調達、製造、販売、廃棄に至るあらゆる段階で、環境に配慮した事業活動を重視し、部材調達におけるグリーン調達強化や、機器の省エネ・高効率化追求、事業活動における再生可能エネルギーの活用拡大やリサイクルなどの取り組みに力を注ぐ。

 現在の市場は、かつてのように地球温暖化への対応を経済成長の制約やコストと考えるのではなく、成長の機会と捉える時代になりつつある。

 15年に採択された「パリ協定(COP21)」では、世界の平均気温上昇をプラス1.5度以内に抑えるという目標が掲げられたものの、現状は目標達成には程遠い状況となっている。今後、官民を挙げて、CO₂排出削減への取り組みをいっそう加速していく必要がある。

 国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は「1.5度目標達成のためには、少なくとも25年までに世界のGHG排出量を減少に転じさせ、30年には19年比で43%程度削減する必要がある」としている。