2023.07.21 【家電流通総合特集】大型新業態店「ライフセレクト」中心に出店攻勢 ヤマダホールディングス 山田昇代表取締役会長兼社長CEOに聞く

経営戦略を語る山田会長兼社長CEO

ライフセレクトでは店舗DXも進むライフセレクトでは店舗DXも進む

電動ソファなど、家電と家具を融合したようなヤマダ独自の商品も人気だ電動ソファなど、家電と家具を融合したようなヤマダ独自の商品も人気だ

4000坪規模で真価発揮

前橋吉岡店、狙い通りの広域集客

 今年の夏商戦は、2022年と違い、ルームエアコンといった夏モノ商材の出足が遅れている。昨年は6月末から7月初旬の販売が良かったため、そことの対比でみると動きが鈍いのが目立つ形だ。

 当社の4~6月は、既存店はほぼ市場水準の売り上げで推移したものの、当社の場合、大型新業態店「ライフセレクト」を中心に出店攻勢をかけているため、出店でプラスアルファを稼いでいる。

 ただ、家電市場全体ではそこまで良い状況ではない。新型コロナの5類移行で、旅行、サービスなどへの支出が増え、巣ごもりで需要を先食いしてしまった家電は、購入が後回しにされがちだ。

「住」の提案を実現

 当社は、こうした環境下でも持続的に成長できるよう、暮らしまるごと提案できる店舗の開発に力を入れてきた。ネット社会とリアル店舗を家電を軸に連携させ、関連商品を充実させる。衣食住の「住」を提案する店舗の実現だ。

 ライフセレクトがまさにそれだが、それでも最初は手探りの店舗開発から始まった。家電や非家電、リフォームなどが一カ所に全部集まり提案できることは、利便性が高い半面、広大な売り場や在庫確保の問題、効率的な運営など、さまざまな面を考慮する必要がある。そのため、大型既存店からライフセレクトへの改装で市場の反応を探ってきたが、当初は中途半端になってしまった面も否めない。

 ここにきて、4000坪(1万3200平方メートル)規模がないとライフセレクトは真価を発揮できないという考えに至った。それを象徴する店舗が、群馬県吉岡町に4月にオープンした「テックライフセレクト前橋吉岡店」だ。

 もともとライフセレクトは広域商圏からの集客を狙った超大型店。前橋吉岡店は高速道路のインターにも近く、県外からの集客も期待できる立地だ。店舗周辺の人口は限られているため、広域から集客できるだけの店舗力をつくり込まなければ意味がなかった。前橋吉岡店は狙い通りの集客ができており、販売も好調だ。こうした店舗をこれからは全国各地につくっていく。

 先月30日には、「テックライフセレクト野々市御経塚店」(石川県野々市市)をオープンした。ホームセンタームサシとイオンスタイルとのコラボ店舗で、敷地内でモデルハウス5棟を展示するなど、新築住宅も提案できる超大型店にしている。

 こうした新しい店づくりができるのも、住宅メーカーをグループ傘下に入れてから12年という歴史の中で、当社にノウハウが蓄積されてきたからだ。

ウェブコムも展開

 ライフセレクトを中核として、その周りに郊外型「テックランド」やアウトレット品やリユース品を取り扱う「アウトレット店」、EC(電子商取引)の物流拠点としての機能も兼ねる「YAMADA web.com(ウェブコム)」を展開している。

 お客さまがニーズに合わせて店舗を使い分けることができるようなエリア戦略で、商圏内のシェアを拡大させていく。アウトレット店は約80店、ウェブコム店は約30店出店した。全国的にカバーできる体制になってきたと考えている。

三菱自のEV、取り扱い開始 11店舗に拡大へ

 三菱自動車の電気自動車(EV)も今月から取り扱いを開始した。まずは5店舗からスタートしているが、11店舗に早い段階で拡充し、さらに取り扱い店舗を増やしたいと思っている。

 EVも「住」に絡む商材で、非常に重要だ。EV単体というよりもスマートハウスといった暮らしまるごと提案につなげるためのラインアップになる。スマートハウスの蓄電池代わりにEVはなる上、スマートハウスになれば、保険や住宅ローンなど金融商品も提案できる。

 当社は、カーディーラーと競い合うつもりはない。車はメーカーの系列店から買うのが基本だが、家電量販店である当社は、家電であれば一つのメーカーだけを扱うわけではない。車も同じだと思っている。

 国内の家電市場は約7兆円。そこにリフォームや家具などを足していけば3倍にも4倍にも市場の可能性は広がる。EVを含めたスマートハウスの提案は、「たのしい。くらしをシアワセにする、ぜんぶ。」を実現するライフセレクトのような店舗にとって必要なものだ。

 今年は昨年より事業環境は悪くないと思っている。商品の単価アップやインバウンド需要の回復などもあり、消費者の支出傾向が変わってきていても商機はあると思う。

 出店戦略の加速、SPA(製造小売り)商品の開発、ECの強化、事業会社別に課題解決しグループシナジーの追求と効率的な運営--という四つが当社の戦略の柱。今後もこの柱はぶらさずに成長を目指していく。

 2025年3月期を最終年度とする中期経営計画は、7~9月の状況を見た上で今後の方向性を判断していきたいと思っている。