2023.08.18 生成AI巡り権利者4団体が共同声明 「著作権保護の検討不十分」

 日本新聞協会など著作物の権利者4団体が、利用者の指示に基づいて文章や画像を自動生成する「生成AI(人工知能)」に関する共同声明を出した。「生成AIと著作権の保護に関する検討が不十分な現状を大いに危惧している」として、関係当局との意見交換を行う場を設けるよう求めている。AIと著作権を巡る議論を深める機運が高まりそうだ。

 共同声明を17日に発表したのは同協会のほか、日本雑誌協会、日本写真著作権協会、日本書籍出版協会。声明では、「生成AIが文化の発展を阻害しないよう、技術の進化に合わせた著作権保護策があらためて検討されるべきだと考える」と強調した。

 生成AIは、社会のさまざまな場面で利便性を高める技術として期待を集める一方、著作物が大量にAIに学習利用され、著作権者の権利を侵害するリスクが懸念されている。

 声明では、情報解析を行う場合は著作物を利用できると定めた日本の著作権法第30条の4に言及し、「諸外国に比べ、AI学習に極めて有利に作られていることは大きな課題」と指摘。同条のただし書きでは「著作権者の利益を不当に害する」場合は学習利用できないとされているものの、その解釈が不明確である点を問題視。権利を侵害するコンテンツが大量に流通する恐れがあるにもかかわらず、実効的な救済策が示されていないと訴えた。

 その上で、文化の発展を阻害するリスクを明示した。一つが、学習利用の価値が著作権者に還元されないまま大量のコンテンツが生成される行為で、創作機会が失われ、経済的にも著作活動が困難になると指摘した。

 さらに、海賊版をはじめとする違法コンテンツを利用した「非倫理的なAI」の開発と生成を問題視。「元の作品への依拠性・類似性が高い著作権侵害コンテンツが生成・拡散される」「AI利用者自身が意図せず権利侵害という違法行為を行う」といった事態にも懸念を示した。

 開発者がAIの学習に記事を無断利用する事態を巡っては、メディア業界で懸念が広がっており、米国の報道機関も対応に乗り出している。今後、生成AIが社会に浸透する時代を見据えて報道の役割やあり方について議論する動きが活発化しそうだ。