2023.08.24 【化学材料特集】メルクエレクトロニクス メタルプリカーサーの開発を強化
静岡事業所
ドイツの大手化学メーカー、メルク(Merck)の日本法人メルクエレクトロニクス(東京都目黒区)は、半導体材料部門では薄膜材料や特殊ガスを中心に、最先端分野への展開を強化し、実績を上げている。
薄膜材料は、メモリー半導体用の塗布材料や、タングステンを代替するメタルプリカーサーの開発を強化している。同社の永田勝社長は「半導体の微細化が進む中で、タングステンの次の材料が求められている。そうしたニーズに対応し、2024年に向けて、NANDやDRAM関連の顧客向けの開発を強化している。また、メタルプリカーサーは材料供給だけでなく、メタルプリカーサーの供給装置も手掛け、DSS(デリバリー・システム・サービス)部門を用意している」と説明する。メルクは昨年、メタルプリカーサーに強みを持つ韓国Mecaro社の化学品事業を買収し、韓国でのメタルプリカーサーの量産対応も開始した。
このほか、ロジック半導体向けに、アミノシラン系プリカーサーの開発も進めており、需要が高まっているALD向けに、ハイスループットかつハイクオリティー膜用のプリカーサーを展開し、既に量産体制を確立済み。
特殊ガスは、地球温暖化対策の重要性が増す中で、エッチングやチャンバークーリング用に温暖化係数の低い新規材料を開発した。同材料は先端メモリーに対応し、既存のパーフルオロカーボン(PFC)を代替する次世代材料として訴求する。「開発した低温暖化係数材料は、デバイスメーカーへの提案とともに、国内装置メーカーと協力することで、ターンキーソリューションの提供につなげる」永田社長。
メルクの半導体材料の開発体制は、ドイツ、米国、日本の開発チームが協業しながら最先端分野向け材料の開発に注力している。21年からは、国内の電子材料事業研究開発拠点である静岡事業所(静岡県掛川市)の研究開発体制および製造能力強化のための投資も実施している。
永田社長は「半導体市場は22年後半以降、下降局面に入っているが、24年からは再び上昇する。その時に、当社の開発した材料を半導体デバイス各社の量産工程で採用していただけるように努め、半導体業界に貢献していきたい」と話す。