2023.08.25 LLMと画像分析で被災状況把握 NEC、初動支援で新技術
現場画像の絞り込み(画面左側)と地図上への表示(同右側)
局所的豪雨の多発など自然災害の激甚化が深刻さを増す中、NECは25日、大規模言語モデル(LLM)と画像分析を組み合わせ、被災状況を把握する技術を開発したと発表した。災害時に時々刻々と市民から寄せられる膨大な現場画像から、初動対応に必要な画像を絞り込み、番地レベルの正確さで場所を特定し、被災場所や被害状況を即時に把握できるようになる。自治体の初動対応の迅速化につながる技術として、2025年度中の実用化を目指す。
被災地に住む住民がスマートフォンで撮影した画像や、ドライブレコーダー、街頭カメラの映像には、詳細な被災状況や場所の情報が含まれることが多く、今回の技術ではこうした画像を活用。生成AI(人工知能)の基盤となるLLMによる言葉の意味解釈と、画像分析による画像の類似性判定を組み合わせ、膨大な現場画像の中から利用者の意図に合う画像に絞り込むことができる。
これまで画像の絞り込みには画像認識技術が使われてきたが、事前に学習した対象物しか認識できず、絞り込める画像が限定されていたが、LLMを活用することで、フリーワードにより現場画像を絞り込めるようになった。利用者が探したい場面を画像で指定すると、言葉では表現が難しい場面でも類似した画像を選定し、意図に合う画像に的確に絞り込める。
利用者は、パソコン画面に「倒壊した建物を探してほしい」「道路上にがれきはあるか」などとフリーワードで入力すると、膨大な画像データの中から該当する画像が絞り込まれ、画像の場所を地図上に番地レベルで表示。救助に向かうべき地点を即座に把握して迅速な初動対応を支援する仕組み。
位置情報が付与されず被災場所が分からない現場画像は、広範囲をカバーする上空画像や地図データと照合することで、現場画像の場所を番地レベルの正確さで推定し、地図上に表示できるのも特長だ。
25年度中に実用化を図り、災害対応を担う関係省庁や自治体などに今回の技術を提供。避難誘導や救助活動など初動の迅速化に役立ててもらう考え。
(28日付の電波新聞/電波新聞デジタルで詳報します)