2023.08.31 【ソリューションプロバイダー特集】主要ソリューションプロバイダー各社にアンケート 電波新聞社まとめ
電波新聞社はこのほど、主要ソリューションプロバイダー各社に2023年後半の市場、デジタルトランスフォーメーション(DX)の取り組み、海外展開、働き方改革についてアンケート調査を実施し、先の見通しを探った。アンケートは毎年新年と夏の2回行っているもので、各社の景況感の見方と施策、成果を定点観測している。今回は23年8月15日から28日まで実施し、37社から有効回答を得た。
受注見通し、引き続き製造業好調
23年後半は、地政学リスクなどもあり不透明感はあるもののICT(情報通信技術)関連市場は引き続き堅調に推移しそうだ。デジタル技術を活用した投資は底堅く推移しており、クラウドを活用したシステム構築はさらに進んでいくとみられる。
アンケート結果によると、足元の受注状況は4~9月は「大幅増」を選択する企業もあり、来年3月までは約6割が「増加」すると選択している。さらに10~12月から来年4~6月までは全企業が受注は前年並み以上を選択しているため、引き続き堅調に推移していきそうだ。
業種別の受注見通しは、前回調査から続いて製造業が好調で6割以上が「増加」以上を選択。流通や公共も4割以上が「増加」と回答した。「増加」の選択が最も少なかったのが前回同様に金融だが「大幅増加」を選択している企業もあり、対象顧客での差がみられた。一方で、金融以外の業種では「減少」を選択している企業が一定数あり、顧客層によって見通しが割れた。
市場の見通しについては「緩やかに成長し続ける」との回答が73%で前回調査よりも増えた。確実なところでは年内は成長するとみるのが妥当だが、一部で半導体不足などを懸念する意見もあった。
新型コロナウイルスの影響については、今年「5類感染症」に移行しアフターコロナの生活が本格的に始まっていることもあり、マイナスの影響が出ている企業は6%と、前回の25%からさらに減少した。影響が出ていないところは前回の19%から44%まで増え、プラスに働いている企業は47%となった。
前回から設問に加えた為替の影響については、出ていない企業が半数を超えた。プラスに出ている企業とマイナスに出ている企業が約2割ずつあるものの全体的には物販を伴う事業を行う企業では影響が出ているようだ。
23年後半に伸びる分野は、前回調査から上位に変動はなく、「クラウド」「セキュリティー」「AI」「IoT」となった。前回新設した「カーボンニュートラル」は選択する企業が一気に減ったほか、「5G」「メタバース」に関しても選択した企業が大幅に減った。一方で、前回よりも選択が増えたのが、「ITマネジメントサービス」「チャットボット」「SDx」となった。
23年後半の重点施策は前回調査から変動し、「クラウド」が首位に。「サービス事業へのシフト」「AI関連」は前回よりも回答数を増やした。前回大きく増えた「働き改革の取り組み」や「デジタルマーケティングの取り組み」は大きく減り、市場見通しと同様に「5Gへの取り組み」も大きく減少している。
DX関連、クラウドやAIなど多い
DXの取り組みについては、提供している企業は97%(前回92%、前々回92%)となり、引き続き大半の企業が取り組んでいる。DX関連のサービスでは前回と同様に「クラウド」が最も多く、「IoT」「AIを組み込んだシステムやサービス」と続いた。「メタバースを使ったサービス」は横ばいだった。
DX関連の売り上げ状況については「伸びている」と回答した企業が大半を占めているが、一部で「伸びていない」との回答も見られた。前回調査では「AIを組み込んだシステムやサービス」と「ビッグデータ」で売り上げが伸びていない比率が高かったが、今回はいずれも比率が大きく下がった。
現在取り組んでいないが、今後取り組みたいサービスでは「メタバース」が最も多く、次いで「AIを組み込んだシステムやサービス」となり、前回と同様の結果だった。
働き方改革 コミュニケーション改善課題
働き方改革については、引き続き全社が取り組みを進めていた。働き方改革の取り組み内容については前回と同様の結果となり、「テレワーク」「人事制度の見直し」「AI、RPAの導入による作業の削減」の順だった。前回、AIやRPAの活用を選択した企業が大きく増えたが、今回は逆に減少した。
働き方改革の効果については「出ている」との回答が95%で前回の100%から減った。具体的な効果については、前回1位だった「残業が減った」が減少し、「社員満足度が上がった」回答が大きく増え1位になった。1年前に1位だった「生産性が上がった」という回答数は減少傾向にある。そのほかでは「移動時間の減少」といった回答があった。
働き方改革の課題については、前回と同様「コミュニケーションの改善」が最も多く、「業務管理の方法」と続いた。「社員のモチベーション向上」は前回から増え、逆に「公正な業務評価」の選択が減った。在宅勤務者とのコミュニケーション不全は多くの企業にとって課題になっているようだ。
半面で在宅勤務については、大半の企業が「全社的に継続する」という回答だったが、前回から選択する企業数が減少。「在宅勤務に制限を付ける」と回答した企業が大きく増えた。
海外事業、59%が今後「増やす」
グローバルに関しては「海外展開している」と回答した企業が76%(前回70%、前々回61%)となり、撤退したところは3%(前回6%)あった。海外事業の多くは営業拠点とオフショアで、両方を展開しているところもあるが、営業拠点の開設を選択した企業が前回から増えた。海外売上高比率は前回同様「0~3%」の企業が最も多く54%(前回52%)だった。2位は「30%以上」が11%となり、前回から大きく増えた。
海外売上高については「増えている」との回答が36%(前回40%、前々回48%)と減少した。一方、「減っている」との回答は11%(前回12%、前々回9%)で比率は減っている。増えている企業は需要の拡大やサービスの拡大などがあり、逆に減った企業はエネルギー危機による経済不況などを挙げていた。
海外事業の今後については59%(前回46%、前々回62%)が「増やす」と回答。海外展開をしていない企業については、今後の予定は半数が「ない」、半数が「未定」と回答した。
今後期待できる地域については、「北米」が前回に次いで1位で、前回からさらに伸ばした「インド」が2位だった。前回から増えたのが「西欧」「中国」で、逆に減ったのが、「ベトナム」「タイ」「フィリピン」だった。
アンケート回答企業一覧
▽伊藤忠テクノソリューションズ▽インターコム▽内田洋行▽NEC▽NECソリューションイノベータ▽NECネクサソリューションズ▽NECネッツエスアイ▽NECフィールディング▽NECプラットフォームズ▽SCSK▽NSW▽大塚商会▽キヤノンITソリューションズ▽コア▽シーイーシー▽電通国際情報サービス▽東芝デジタルソリューションズ▽日本事務器▽ビジネスエンジニアリング▽日立製作所▽日立システムズ▽日立ソリューションズ▽日立ソリューションズ・クリエイト▽富士通▽三菱電機インフォメーションシステムズ▽ユニアデックス▽ユニリタ、ほか10社。