2023.09.14 事務機各社が商業印刷のデジタル化戦略強化 ニーズ多様化や人手不足に対応

富士フイルムBIの印刷用紙ハンドリングロボット

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 事務機各社が、商業印刷市場のデジタル化に向けた製品戦略やソリューション提案を活発化させている。同市場では多品種小ロットニーズが強まり、アナログ印刷からデジタル印刷へのシフトが加速。また、熟練技術者をはじめとする人材不足もあり、印刷プロセスの自動化・効率化を実現するDX(デジタルトランスフォーメーション)への期待が高まっている。

 商業印刷市場は、デジタル化への大きな転換点を迎えている。ニーズの多様化を背景に、多品種少量印刷、オンデマンド印刷に対応できるデジタル印刷の需要が拡大。アナログ印刷が低迷する中、デジタル印刷は2桁伸長が見込まれている。また、人手不足解消のための自動化、さらには経営革新を実現するDXの導入が求められている。

 富士フイルムビジネスイノベーション(富士フイルムBI)は、「Add Value from DX」をコンセプトに、パートナー企業とも連携したDXエコシステムを提案している。

 一つは、スマートファクトリー。オフセット印刷を中心とした従来の印刷環境の課題である①各工程が個別に管理され、全体最適の工程管理が困難②各業務が熟練技術者に依存(属人化)し、標準化が困難③時間と手間を要する工程間作業の可視化・管理が困難、などの解決を目指す。さまざまなメーカーの設備からなる生産工程の進捗(しんちょく)を統合的に可視化・分析し、最大40%の工数削減を実現する。

 もう一つが、企業のマーケティング領域でのDX支援。同社のクラウド上に開発したシステム基盤を使い、データの統合・可視化・分析をサービスとして提供している。

 このほか、電子帳簿保存法やインボイス制度などに対応するため、トランザクションDXサービスとして、TOKIUMの請求書クラウドサービス「TOKIUMインボイス」を提供している。

 コニカミノルタは「創注・受注拡大支援」と「生産性向上支援」の2軸で商業印刷のDX化を推進し、印刷業界のビジネス成長と収益力向上に注力する。

 印刷現場の課題解決を推進するモノクロデジタル印刷システム「AccurioPress(アキュリオプレス)7136シリーズ」2機種を9月から順次発売。熟練技術者の不足に対応し、高度で緻密な調整業務をスキルレスで行うことができるかんたん設定機能など、省力化ニーズに応えている。同シリーズは、自動品質最適化ユニット「インテリジェントクオリティオプティマイザー(IQ-501)」の「1to1印刷(バリアブル印刷)の自動検査機能」などを利用できる。

自動化・効率化機能

 リコーは、カラープロダクションプリンターのフラッグシップモデルとなる新製品「RICOH Pro C9500」を8月に投入した。商用印刷領域での多様化するニーズに応えるため、用紙対応力と自動化・効率化機能を強化している。新開発の本体制御システム「RICOH GC OS」を採用。さまざまな用紙の設定や調整、機器の利用状況やメンテナンスの管理に特別なスキルが不要となり、商用印刷の現場の業務効率化を推進する。

リコーの「RICHO Pro C9500」

 キヤノンは、プロダクション(商業印刷)市場向けビジネスを成長事業に位置付け、「imagePRESS V」シリーズを拡充。新製品「imagePRESS V1350」が好調だ。また、検品工程の自動化など印刷業界のDX化を実現する商品、サービスの充実を図っている。

 京セラドキュメントソリューションズでは商業印刷のカスタマイズ、オリジナル印刷需要に対応した「TASKalfa Pro 15000c」が好評だ。