2023.09.27 【関西エレクトロニクス産業特集】関西の大学で起業支援が活発化 立命館 小学校から大学院まで一貫支援「RIMIX」

メタバース上で交流するアバターたち(岡村さん提供)

岡村さん(岡村さん提供)岡村さん(岡村さん提供)

教授陣と職員が連携サポート

岡村さん メタバースで居場所作り

 関西の大学で、起業支援の取り組みが活発化している。経済産業省によると、2022年度時点の大学発ベンチャーは3782社に上り、前年度から477社増加、企業数・増加数ともに過去最高を記録した。大学による支援は、研究開発型ベンチャーに向けたものだけでなく、起業憧れ層に向けたアントレプレナーシップ養成など、裾野が広い取り組みも推進されている。関西の主要な私立大学の、最新の取り組み状況を紹介する。

 小学校から大学院までを擁する総合学園、立命館は、研究シーズ型ベンチャーの創出だけでなく、初等・中等教育段階からアントレプレナーシップ養成を推進している。立命館の全額出資により、10億円規模で社会的企業に投資する「立命館ソーシャルインパクトファンド(RSIF)」を設立するなど、起業支援に注力。2025年までに企業の価値・評価総額300億円以上、起業・事業化支援100件達成を目指す。

 同学園の強みは、小学校から大学院まで一貫した起業支援プラットフォーム「RIMIX」だ。一貫教育型アントレプレナーシップ教育の中で、社会課題を積極的に解決する人材の育成に取り組む。

 立命館大学大学院テクノロジー・マネジメント研究科の岡村謙一さんも、RIMIXで学んだ。実践型の「EDGE+R」プログラムでは、フィールドワークを通じて起業に必要となるさまざまな思考方法を習得した。

 岡村さんは「新たな価値観、モノの見方を教えてもらい、衝撃を受けた」と振り返り、同学園の支援について「教授陣と職員が連携してサポートしてくれるのが魅力だ」と話す。

 岡村さんは、メタバースを活用した教育プログラムを提供する「ゆずプラス」の社長、メタバース内で不登校学生の居場所づくりに取り組む非営利型一般社団法人「プレプラ」の代表理事を務めている。

 累計4000時間以上をメタバースで過ごしてきた岡村さんは、「水瀬ゆず」の活動名を用い、ネコの耳が付いたアニメ調のアバターで活動している。バーチャル空間でさまざまな人と交流を重ねる中、偶然に不登校当事者である立命館付属校の高校生と出会った。これがきっかけとなり、メタバースを活用した不登校学生の居場所づくりに取り組み始めた。

 22年9月には、広島市社会福祉協議会の支援で、実際に不登校の学生3人が参加する8日間のプログラムを実施。復学がゴールではなく、居場所づくりをサポートすることが目的だ。3人はそれぞれ好きなアバターの姿となり、メタバースで活躍する人や元不登校の人から話を聞いたほか、国内外のバーチャル観光名所を訪れるなど交流を楽しんだ。

 初日には緊張や不安でいっぱいだった3人だが、最終日には「終わってほしくない」「すごく楽しかった」と名残惜しい様子に。うち一人は、この体験から勇気をもらい復学に至ったという。

 岡村さんは「会えなくても共に経験を重ねる中で仲良くなれるのは、メタバースならでは。夢は、メタバースにまちをつくること。実空間と仮想空間が交わるようなSFチックな空間をつくりたい」と話した。