2023.10.19 「NTT肥大化すれば事業圧迫」 NTT法廃止反対、大手通信3社が懸念表明

NTTを除く大手通信3社のトップがそろって記者会見した=19日、東京都千代田区のベルサール半蔵門

 NTT法の廃止反対を求める180社連名の要望書を提出したKDDI、ソフトバンク、楽天モバイルの通信大手3社の経営トップが19日、そろって記者会見を開き、「NTT法を廃止すれば事業上の制約がなくなり、NTTがグループとして肥大化して事業が圧迫される」と懸念を示した。

 「180もの企業や団体がそろって要望を出すのは初めてのケースだろう。見直しの議論を強引に進めるのは世論を無視した方向で、大きな問題だ」。KDDIの高橋誠社長は、記者会見の席上、こう口調を強めた。

 1980年代に制定されたNTT法は、研究成果の公開義務や取締役の選任・解任や事業計画の変更に総務相の認可が必要となるなど国際競争力を阻害する要因も多い。この日の会見では3社の社長とも「古い法律の見直しは必要」としつつも、同法廃止については「NTTグループの一体化で構成な競争環境が阻害され利用者料金の高止まりやイノベーション停滞を招く」として反対の立場を明確に打ち出している。

 廃止による懸念が特に強いのがNTT東日本・西日本の事業拡大だ。NTT法はNTT東西の業務範囲を細かく定めているが、完全民営化で両社を縛る規制がなくなれば旧電電公社時代に整備された電柱や管路などのインフラを引き継いだNTTグループが設備を独占する可能性も指摘されている。ソフトバンクの宮川潤一社長は「NTT東西がファンドや外資に買収された場合、国民生活や企業の活動に大きな影響が出る。それを防ぐためNTT法で規制をかけている」と言及。「そもそもの生い立ちが違い、日本の重要な公共資産の運営をするなら規制は当然だ」と訴えた。

 約2年前に携帯電話事業に参入した楽天モバイルの鈴木和洋共同CEOは「日本の通信事業者は低価格で高品質なサービスを公正な競争の上で提供している」と述べた上で「NTT法を廃止すればNTT東西がそれぞれ商品を抱き合わせ販売して利用者を囲い込み、最終的には値上げされて国民に不利益が生じる」と強調した。

 一方、NTTの島田明社長は、自民党や総務省の会合で、グループが掲げる光技術による次世代情報通信基盤「IOWN(アイオン)」構想など国際競争力強化のためには「自由で機動的な事業展開が必要だ」としてNTT法の規制緩和を求めている。

 自民党はNTT法の見直しに向けた提言案を11月にもまとめる方針を示しており、今後大手通信各社の綱引きも注目される。

 (20日付の電波新聞/電波新聞デジタルで詳報します)