2020.03.10 【中部産業特集】中部の製造業、電子部品・デバイスPCや5G関連向けに需要回復の動き

昨年11月の名古屋モーターショーで披露されたトヨタの燃料電池車「ミライ」

同時開催の「あいちITSワールド」でのデンソーブース同時開催の「あいちITSワールド」でのデンソーブース

日間賀島の実証実験で走行した自動運転バス日間賀島の実証実験で走行した自動運転バス

遠隔監視の説明を受ける大村知事(右から2人目)遠隔監視の説明を受ける大村知事(右から2人目)

 中部の製造業は、主力の自動車や工作機械が厳しい受注状況にある中で、電子部品・デバイスは、PCや次世代高速通信規格5G関連向けに需要回復の動きが出てきた。

 愛知県の有力企業は、自動運転車や燃料電池車、電気自動車など次世代自動車向けに、IoTやAI(人工知能)など最新技術を活用した製品開発や研究開発投資などに注力し、新規事業向け需要の開拓に期待をかけている。

中部経産局管内、設備投資が全体で増加

 中部経済産業局が2月13日に発表した管内(愛知、岐阜、三重、石川、富山)の総合経済動向によると、輸送機械の生産は、乗用車と自動車部品が国内、海外ともに弱含みのため、全体で弱含みとなっている。金属工作機械も国内、海外ともに弱い動きのため、全体でも動きが弱い。

 電子部品・デバイスの生産は持ち直しの動きが見られる。半導体はPC向けを中心に回復の動き。液晶素子はスマートフォン向けを中心に低水準で推移している。

 電気機械の生産は横ばい。開閉制御装置・機器は、海外向けの動きが弱いものの、国内向けに持ち直しの動きが見られるため、全体では横ばいを確保している。

 電動機も、海外向けが弱い動きとなっているが、国内向けに持ち直しの動きが見られ、全体では横ばいとなっている。

 ファインセラミックスの生産は、弱含み。触媒担体・セラミックフィルタが、国内の自動車向けが横ばいとなっているものの海外向けの動きが弱いため、全体でも弱含みにとどまっている。

 設備投資は全体で増加している。製造業では、電気機械や生産用機械などで増加する計画だ。

 中部経済連合会が5日に発表した、法人会員242社から回答を得た「中部圏の景況感の現状(1-3月期)と見通し(7-9月期)」によると、1-3月期の中部圏の景況判断はマイナスとなった。

 景気判断の先行きについては、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う中国経済の混乱や国内経済への影響懸念などから、来期の景況感は悪化すると見られている。

愛知県内有力企業次世代自動車分野に重点

 愛知県内の有力企業は、先端技術の次世代自動車分野向けに、他社とのアライアンスや実証実験に取り組んでいる。

 デンソーは今年1月、米国クアルコムテクノロジーズと次世代コックピットシステムの共同開発を開始した。同社は、クアルコムテクノロジーズの通信技術やスマホ向け半導体、ソフトウエアなどの情報技術と、自社のHMI製品に関する車載要件、機能安全や品質、セキュリティ技術を掛け合わせることで、次世代コックピットシステムの開発を加速する。

 アイシン精機は、イオンモール常滑と協力し、次世代広告システムの実証実験を愛知県知多半島で3月から実施。

 新たに開発した車内移動中の乗員ステータスを予測するリズムプラットフォームを使い、目的地や車の位置、混雑状況に合わせて目的地周辺の店舗・施設の商品・サービスの魅力を伝える音声広告を随時配信し、車内移動空間における1to1マーケティング事業の可能性を検証する。

 日本特殊陶業は1月末、三菱日立パワーシステムズ(MHPS)と、燃料電池セルスタックの製造・販売を行う合弁会社「セシルス」を愛知県小牧市に設立した。

 同社が保有するセラミックスの量産技術の活用により、MHPSの長寿命で熱利用が可能な円筒セルスタックを高品質で量産・販売していく。

愛知県<19年度>3市町で「自動運転社会実装実証事業」

 愛知県は19年度に、内閣府の「近未来技術等社会実装事業」を活用し、自動運転社会実装実証事業を県内3市町(常滑市、長久手市、南知多町)で実施した。

 愛知県は、将来の自動運転サービスの実現を目指し、16年度から自動運転の実証実験を積み重ねてきた。

 19年度は、8月末に常滑市の中部国際空港島内・愛知県国際展示場、11月に長久手市の愛・地球博記念公園、1月に南知多町の日間賀島で、それぞれ自動運転車の実証実験を行った。

 中部国際空港島内では、トヨタ自動車のレクサスを使用し、遠隔型自動運転や動的な交通環境情報を利用した移動を手がけた。

 愛・地球博記念公園では、ヤマハ発動機のゴルフカート「マイリ-」を使用し、車内無人の客席のみの遠隔型でAIを活用したオンデマンド配車と、VRによる車内コンテンツを提供した。

 日間賀島では、日野自動車のEVバスを使用し、レベル3(運転席有人、遠隔監視有)の観光型MaaSによる移動となった。

 19年度の自動運転社会実装実証事業には、「あいち自動運転推進コンソーシアム」の会員である、NTTドコモ、アイサンテクノロジー、ティアフォー、岡谷鋼機、損害保険ジャパン日本興亜、名古屋鉄道、日本信号、名古屋大学の7社1大学が共同体で事業を実施した。

【中部産業特集】記事一覧

●中部の製造業、電子部品・デバイスPCや5G関連向けに需要回復の動き
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