2024.01.12 【新春インタビュー】シャープ 沖津雅浩代表取締役副社長執行役員

原点に戻りブランドを磨き直す

 ―2023年の業績はいかがでしたか?

 沖津 当社はブランド事業とデバイス事業がございます。ブランド事業の商品は海外生産をしているため為替の影響を大きく受けたわけですが、打ち返しの施策に取り組んだことで、22年度に調子が良くなかったパソコン(PC)、通信機器分野が黒字転換いたしました。

 また、複合機(MFP)もコロナ禍の影響を受けておりましたが徐々に回復し業績を伸ばしていますので、ブランド事業全体はいま何とか耐え忍んでいる状況です。PC、携帯電話事業は厳しかった分、回復の度合いが大きいですね。

 PCについては全て輸入ですので、為替が1ドル150円まで耐えられるよう構造改革には徹底して取り組んでまいりました。PC事業のように、リーダーが速く判断をし早く対策した部門は業績も早く改善する傾向がございます。

 ―人気が高い商品も出されましたね。

違いが分かる商品

 沖津 家電市場全般は前年同期より落ちていますが、お客さまが欲しいと思う商品は伸びていますね。当社では「プラズマクラスタードレープフロードライヤー」IB-WX901が好評でした。ノズルサイズが従来機より半分になり、見た目のデザインが一般のドライヤーと比べ大きく違いますし、速乾性能が大幅向上するなど優れた特長を持っています。こうした違いが分かる商品は、お客さまからも支持されます。

 ただ、大型の耐久消費財購入については、もう少し我慢しようかと考える方はまだ多いようです。もっとも、いざご購入される際にはワンランク上の商品を選ばれる方は増えています。

 ―違いが分かる特長ある商品開発は重要ですね。

 沖津 他社と同じものを開発しても意味はありません。伝統的に当社は、とがった商品開発に取り組んできましたが、これからもそれがより重要になると思います。特長的な機能開発に投資を絞り込んで、あとはソフトウエアで後から機能を強化していくといったやり方が重要になるのではないでしょうか。

 商品開発をゼロベースで一度リセットして、こういうものを作る、ということを見定めていきたいと思います。かつてのようにあれもこれもとたくさん機能を盛り込んだ商品開発では、魅力を感じていただけません。

 創業111周年を機に、〝他社にまねされる商品を作る〟、当社の原点に戻りもう一度ブランドを磨き直そうと思っております。

 ―市場動向を踏まえ、23年度の見通しをお聞かせください。

 沖津 ルームエアコンについては23年上期は猛暑で実販は伸びたものの、流通在庫が多く、出荷は前年を割り込みました。冷蔵庫は下期に入って業界全体は良くありませんし、3月末まで白物家電市場は厳しい状況が続きそうです。

 携帯電話につきましても厳しいですが、これは予想の範囲内の展開です。一方、MFPは安定した需要が見込め、PCは当社の場合B2Bのチャネルでの販売が多いため、下期のビジネス向けの回復に伴って良くなりますので、ブランド事業全体は3月に向けて、それほど現在の見通しに大きな変化はございません。

 ―全社的にはブランド事業がけん引していくのでしょうか?

 沖津 全社的にブランド企業として伸ばしていくという方向で臨んでいます。デバイス事業は乱高下があり、ブランド事業の比率を上げなければ経営も安定しません。

 デバイス事業では、汎用(はんよう)品ではなく独自のデバイスを開発していく必要があります。かつて当社は液晶の前にも光半導体でトップシェアを持っていた時期もございましたが、こうした商品を積極的に開発していきます。生産についてはファブレスでもよいと考えていまして、投資は技術開発や人材に厚くしていきます。

チームプレーができる人材育成

 ―人材確保は重要です。人材投資についてどうお考えですか?

 沖津 人材不足の中、例えば間接部門はIT化で省人化は可能ですが、創造的な開発業務はIT化で置き換えはできません。またルーティンワークは外部に出してもいいですが、キーとなる技術は社員が担うようにしたいと思います。

 当社は2016年に鴻海傘下に入り、構造改革の一環で節流に取り組み、人材投資も抑えてきました。しかし、これからは人材投資を抑えていては競争に負けますので、一昨年から研修制度を復活させました。特に重要なのはリーダー研修だと思います。個人で仕事はできても、人を使ってチームで仕事をやることとは異なります。チームプレーができる人材を育成していきたいですね。それが強みになっていきます。

 ―社内にも変化は見えてきましたか?

研修制度再開に大賛成

 沖津 若い社員は特に研修制度の再開には大賛成ですね。当社も50歳以上の方の構成がさらに高まっていますので、若返りは不可欠です。そのためにも今から若い人の育成が必要となります。

 ―昨年はSHARP Tech-Day(テックデー)も開催されましたね。

 沖津 創業111周年を記念して、元気なシャープの姿をお見せしようと開催いたしました。あれだけの規模でオープンに当社の技術を総合的にご紹介したのは初めてですね。中でもデバイスの技術にこんなものもあったのかといった反響を頂き、それを機に新たなお客さまの開拓にもつながりました。シャープと一緒に仕事をしたいという話も頂いております。

 24年以降も継続してやっていきたいと思います。特にデバイス技術の公開で、新しいお客さまを開拓していきたいと考えています。

 ―新規事業の取り組みはいかがですか?

 沖津 一つは電気自動車(EV)の分野ですね。EVそのものを作るというわけではありませんが、液晶ディスプレーやプラズマクラスター技術、センサー技術などをはじめ、当社のどんな技術が車電に応用できるか、さらに検討を進めます。

 またEVは、V2Hとして使えば、まさに家電製品の一部になります。当社はソーラーのみならず蓄電システムも手掛け、EVもその中の一端末として全体をエネルギーマネジメントしていくというビジネスも大きくしていきます。

 このほか、デバイスではeポスターをはじめ、ナノLEDとか独自技術は多く、ブランド事業では健康関連の家電開発やソリューションも強化していく必要があります。

 デジタルヘルスケア分野では、非接触で脈拍を測るとか、バイトスキャンなど、新たなソリューションの開発に力を入れています。シャープらしさを生かしたとがったものを創っていきたいですね。

テレビで新しい付加価値を創造

 ―24年に臨む基本方針をお聞かせください。

 沖津 この5年間はブランド事業の強化に取り組んでいきます。新規商品の開発も各ビジネスユニットがそれぞれしっかりテーマを持ってやっていきます。

 その一つがユニバーサルネットワークです。テレビを健康ソリューションのディスプレーにするとか、新しいことを考えていきたいと思います。テレビは特に新しい付加価値を創造する必要があります。

 テレビ事業では海外をしっかりやりたいですね。国内で展開するAQUOS XLEDも、アジアなど海外にも積極的に展開していきます。

 大型カテゴリーで市場をリードし、国内市場では総合的にトップブランドの地位を固めるよう頑張っていきたいと思います。一方で、新しいテレビの使い方を他社に先駆け、日本の事情にかなったものをやっていく必要があると考えております。最も強い当社のAQUOSブランドをさらに強化してまいります。

 ―カーボンニュートラルへの取り組みはいかがですか?

50年にCO₂排出ゼロ

 沖津 長期環境ビジョン「SHARP Eco Vision 2050」では21年度比で50年にCO₂排出ネットゼロ、35年までには60%削減する目標を掲げています。また、省エネ商品を作ること、創エネを活用した工場のCO₂排出抑制、製品へのリサイクル材の活用など幅広く取り組んでいきます。社用車のEV化なども視野に入れております。

 ―省エネ製品の開発では省エネ大賞も受賞されましたね。

 沖津 プラズマクラスタードラム式洗濯乾燥機で、ハイブリッド乾燥システムNEXTが高く評価され、省エネ大賞の最高賞・経済産業大臣賞を受賞できました。最高賞は20年にエアコンのエアレストに次いだ事例となります。もう一つ、倉庫向けLED照明制御システムでも省エネセンター会長賞を受賞しました。

 ―24年はどういう一年としたいですか?

 沖津 23年度よりも業績を伸ばします。24年は為替が1ドル130円台という話もありますから、当社としては追い風でもあります。また、厳しかった市場もグローバルで回復基調に向かうと思います。デバイス事業は構造改革の途上ですが、ブランド側は成長戦略に入る年です。攻めの一年にしたいですね。

(聞き手は電波新聞社 代表取締役社長 平山勉)