2024.01.15 【電子材料特集】各社の事業展開 クラレ

池森 執行役員

車載や5G基地局などに期待
ジェネスタ販売数量、前期比10%増以上めざす

 クラレは、耐熱性ポリアミド樹脂「ジェネスタ」を事業化し、電気・電子分野のコネクター向けや、自動車関連(車載電装/自動車耐熱部品)を中心に実績を拡大している。

 ジェネスタ(PA9T)は、同社が世界で初めて工業化したノナンジアミンを使用したポリアミド樹脂。耐熱性、低吸水性、耐薬品性など優れた特長を持つ。特長は①優れた耐熱性(融点306度と高く高温時物性に優れる。はんだ耐熱性270度)②低吸水性。以上により表面実装時のブリスター発生を防ぐ③優れた摺動(しょうどう)性④優れた成形性など。これらの特性が評価され、年々販売規模を拡大している。

 池森洋二執行役員イソプレンカンパニー長(兼ジェネスタ事業部長)は、ジェネスタ事業の動向や展望について、「2023年度(12月期)は3Q(7~9月)までは需要が低調だったが、4Q(10~12月)から少し回復の兆しが出てきた」とし、「24年は、車載での拡大が期待できるほか、パソコン関連も緩やかな回復が期待できる。5G基地局整備への投資にも期待している。24年度もジェネスタ販売数量は前期比10%以上の成長を目指す」と話す。

 用途別では、自動車のEV化が進む中で、ジェネスタの耐熱性、低吸水性、高強度、加工性の高さといった特性が高く評価され、熱マネジメント関連用途での販売が増加している。特に急速充電関連では、ジェネスタの優れた耐トラッキング性(耐電気絶縁性能)が評価されている。

 ジェネスタの生産体制拡充では、初の海外工場となるタイ新工場が完成し、23年2月から順次稼働を開始した。これにより安定供給体制を強化している。

 ジェネスタ事業では世界10カ国・13拠点に販売や技術サービスの担当者を配置。国内では技術開発拠点「つくば研究センター」による顧客との協創を推進しており、さらに海外でもCAEサービスをはじめとする技術開発拠点設置の検討を進める。

 新製品開発では、既存のPA9T銘柄と比較し、高摺動特性および高耐熱特性を高めた銘柄開発を進めており、評価が進んでいる。