2024.01.16 【半導体/エレクトロニクス商社特集】半導体/半導体製造装置の市況の見立て 日米欧などで生産支援の政策が相次ぐ
セミコンでは有力政治家らが登壇する場面も
中国の位置づけが大きく影響
AI需要の追随に焦点
半導体や製造装置の市況については、アナリストの間でもさまざまな見方がある。昨年の「セミコンジャパン2023」でのセッションを中心に紹介する。
一服の可能性
「大きく影響するのは中国の位置付け。市場が想定程度の鈍化で済んだとはいえ、中国市場がグローバルに占める比率も踏まえつつ、これまでの受注状況からみると中国は一服する可能性がある」とアナリストの一人は見立てる。
リソグラフィー向けの装置は上振れするが、受注残の消化が順調に進んでおり、これを除くと厳しいとみる。特にNANDはまだ厳しく、需要も強くない。供給網全体で解消されるには時間がかかりそうだという。ただ、DRAMはまだ正常化してきたとみる。
中国の市場を弱くみている背景には、マクロの需給調整も進む中、「経済合理性以外(の政治的な要素)があるとしても、水準は下がるだろう」との見方がある。特に、さまざまな設備投資の計画からみると、7ナノ以下の先端プロセスのキャパシティーが増加する見込みで、それらの投資が計画通りに実行されると供給過多になり、生成AIの需要で埋められるかどうか微妙なようだ。
ただ、中国投資自体は続く見込み。「人口などを考えても、例えば、光トランシーバーなど新しいビジネスを考える時、そうした信号処理を必要とするのはまず中国、そしてインドでは」との見方だ。
一方、米国や欧州、日本でも半導体などを巡る生産支援の政策が相次ぐ。しかし、欧州でも補助金の実際の予算執行には流動的な部分があるとみられるという。同様に補助金政策に力を入れる米国も、個別企業の業績が回復しないと投資が続かない可能性がある。日本では「半導体関連の予算がどこまで持続するか」という懸念もある。
別のアナリストは、今後AIパソコンやAIスマートフォンが本格化し、1億台単位で売れる可能性を指摘する。それとともに、予想しづらい要因には米国や韓国のメモリー各社がどこまで需要に追随できるか、という流動的な事情があるようだ。
巣ごもり需要や買い替え需要の一服後とはいえ、モビリティーの電動化、また、SDV(ソフトウエア定義車)化は、EV化というより「スマホ化」の面があり、データ量の増加が見込まれる、とみる意見もある。ただ、「生成AIの実装がどのくらい市場のけん引役になるか」と、読み切れない面もあるようだ。
こうした中、個人消費以外の要素に目を向ける必要性も指摘したのは、セッションの司会を務めた英オムディアの南川明氏。「個人消費が回復しなくても、GAFAMなどの投資がけん引する可能性がある。Edge関連も、世界の景気とはリンクせずに投資される面もある」との見方が背景にある。
比較的堅調に推移している車載などのパワー半導体についても、供給過剰を懸念する声が聞かれた。SiでもSiCでも起きる可能性があるとの見立てだ。また新技術への注目も進む。「後工程の自動化は必然になっている。その先取りをラピダスが考えているのかもしれない」という指摘が出た。
ソフトが重要に
今後については「半導体は、技術革新、領域拡大などが必要で、人材や資金などのいわば総合格闘技になっている」との説明があった。同時に、「株価が安いとそれも買収のリスクになる」と、さらなる再編への期待が上がった。
「グローバルなソフトウエアがないことが、半導体産業で致命的になる可能性がある。インテルにはそれがあるのでファウンドリーができる。ラピダスの上に乗っかるアプリケーションが重要」との意見も出た。日本もハードに加えてソフトが重要との提起だ。
さらに「政府の強力な支援は否定しないが、経済安保(だけが理由)では持続性がないのでは。社会課題解決といったビジョンの中で、プロセスをどう支援するか、があるべき」という意見も示された。