2024.01.18 【情報通信総合特集】ICTベンダートップに聞く 24年の見通し・経営戦略 富士通 人工知能研究所 園田俊浩所長

生成AIビジネス強化
「人類のバディ」へ開発加速

 2022年に米オープンAIの対話型生成AI(人工知能)「ChatGPT」が登場し、研究テーマも大きな変革期を迎えた。これまでコマンドやマウスを使って指示していたものが自然言語での対話でできるようになり、AIを使える幅が広がった。これらを応用したビジネスが今年は一気に普及するだろう。

 生産性向上に加え、生成AIは人が考えるプラスアルファも提示してくれ、人の創造性を高める可能性がある。ただ、事実とは異なる内容をもっともらしく生成するハルシネーション(幻覚)や著作権の問題もあり、正と負の側面を踏まえて成長させていく必要がある。

 米IT大手はクラウド型のビジネスをしているが、当社は顧客企業の声を聞き、個別にカスタマイズする形で生成AIを使っていきたい。現在、スーパーコンピューター「富岳」で独自の大規模言語モデル(LLM)の開発を進めている。小規模LLMで顧客の業務に特化した用語やプロセスを教え込ませ、環境に合わせた対応をしていきたい。

 昨年4月から、AI技術をクラウド経由で使えるプラットフォーム「Kozuchi(コヅチ)」の提供を始めた。現在約900人の研究者がいる当研究所では、AI開発に約30年携わり約6000の実証をしてきた。製品化までのプロセスを短縮するため、コヅチは研究開発の成果をすぐに無料で利用してもらい、フィードバックを得て技術向上につなげるのが狙いだ。

 これまでは顧客の要望を聞いてAIを構築するのは専門家の領域だったが、生成AIの活用でラストワンマイルの自動化を図ることができた。顧客の課題解決のため、AI技術を組み合わせて最適なソリューションを提供する「コンポジットAI」を提供したい。

 事業ブランド「Uvance(ユーバンス)」の一環として、これまでの研究成果をビジネス化していく。AIコンポーネントをユーバンスのソリューションとして組み込んでいく計画を進めている。

 テキスト文書だけでなく画像や音声なども生成するマルチモーダルは生成AIの理解力をさらに向上させる可能性があり、今後の拡張に欠かせない。一方で、AIが複雑化して、なぜそう考えたのかが見えなくなっている。説明可能なAIについての研究も重要になってくる。

 2024年は「AIは人類のバディ(相棒)になる」をキーワードに、顧客の生産性と創造性を向上させる技術や仕組みを作っていきたい。