2024.01.19 【ICT展望 2024】キヤノンマーケティングジャパン 足立正親社長

キヤノンMJの足立社長

持続的成長へ事業規模拡大
好調なITソリューション、人的資本も強化

 ―経済環境も緩やかに回復する中で、2023年のICT市場をどう振り返りますか。

 足立社長 国内経済は、新型コロナウイルスが5類に移行後、正常化に向けた動きが活発になった。人流が増え、お客さまとの接点も増加した。働き方もテレワークとリアルのハイブリッド型が定着した。エネルギーコストの上昇やサプライチェーンの問題もあり、投資を抑制する業種があったが、ICT市場は企業のDX投資や電子帳簿保存法(電帳法)、インボイス制度など法制度対応もあり、堅調に推移した。

 ―23年度(1~12月)の業績の進捗(しんちょく)はいかがですか。

 足立社長 増収増益で、計画通り進捗している。インクジェットプリンターなどのコンスーマ分野や半導体投資が停滞している産業機器分野などは、厳しいものの、ITソリューション事業が計画通り好調に推移している。第3四半期累計のグループトータルのITソリューション売り上げは、前年同期比12%増となっている。エンタープライズセグメント(大手・準大手・中堅企業)、エリア(中小企業)とも好調だ。また、専門領域(プロフェッショナル)では、ヘルスケアの売り上げが大幅に増加した。

 インクジェットプリンターや複合機も、付加価値の高い商品の売り上げが伸びている。製造コストの上昇を適正な価格に転嫁できている。ソリューションとの連携やサポート体制などトータルな価値提案に力を入れている。複合機がJ・D・パワーの「顧客満足度調査」で第1位を受賞した。

 ―中でも好調だったソリューションは。

 足立社長 電帳法、インボイス対応では、エンタープライズを対象としたDigitalWork Accelerator(DWA)、エリアを対象としたNIコンサルティングとの連携ソリューションなどが好調だった。また、中小企業のIT環境をトータルで支援する「まかせてIT DXシリーズ」、Edgeソリューション領域、セキュリティー関連も好調だった。

 ―人的資本の強化として、デジタル人材に育成に力を入れています。

 足立社長 お客さまへの課題解決力を高めるため、グループ社員全員(1万4000人)がDX検定・DXビジネス検定を受検するなど、人的資本の底上げを図っている。DX検定シリーズで、認定者が最も多い企業に送られる企業優秀賞も受賞した。

 ―24年の経営方針をお願いします。

 足立社長 24年は、長期経営構想に向け、持続的成長に向けた利益ある事業規模の拡大に取り組む。ITソリューション事業は、25年に売り上げ3000億円の計画に向けて、サービス型事業モデルを強化・拡充する。保守・運用における付加価値ビジネスを強化し、顧客のDXを支援する。また、中堅・中小企業のIT人材不足やセキュリティー、ITインフラなどの課題に応えていく。

積極的に事業投資

 M&Aや資本業務提携など、事業投資も積極的に実施していく。昨年10月にグループ入りした東京日産コンピュータシステムはITインフラ、データセンター(DC)サービス、システム運用に強みを持ち、シナジーを出していく。

 サービス型ビジネスモデルに対応した基幹システムの刷新、好調なDC事業は3号棟の建設も検討を開始した。

 引き続き、人材の高度化と従業員のエンゲージメント向上に取り組む。持続的成長に向けたサステナビリティー経営を推進する。