2024.01.24 【ネプコンジャパン/オートモーティブワールド特集】カーエレクトロニクス動向

中国BYDの電気自動車

幼児置き去り検知システムのデモ(ミネベアミツミ)幼児置き去り検知システムのデモ(ミネベアミツミ)

次世代自動車に照準 関連各社、技術開発活発化

 ADAS/自動運転技術の高度化や電動化を背景に、カーエレクトロニクスの技術革新が進んでいる。特に近年は、世界的な脱炭素化要求の高まりにより、環境対応車へのシフトが一段と加速。自動運転技術は、タクシーやトラックなどのドライバー不足の観点からも重要度が増している。これらを背景に、電子部品・素材メーカーは、次世代自動車に照準を合わせた車載用電子部品・モジュールや電子材料の技術開発を活発化させている。

 電子部品・デバイス産業にとり、自動車市場は今後の中長期の成長を支える最重要分野の一つ。自動車の世界生産台数は、乗用車と商用車を合わせ、2010年代後半には年間9500万台前後まで拡大した。20年は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、自動車世界生産台数は7600万台から7700万台程度まで激減し、21年、22年も世界的な半導体不足などが響き、自動車世界生産台数は期待を下回る水準にとどまったが、20年前半を底に、回復基調が続いた。

 そして23年は、ようやく半導体調達難の問題が解消に向かい、日本や北米を中心に自動車メーカー各社の挽回生産が進展。一方、最大市場である中国の自動車生産は、EV(電気自動車)を除くとやや低調に推移した。それでも23年トータルでの自動車世界生産台数は、年初段階の予想をやや上回り、9000万台近い水準まで回復した見込み。

 23年の10月から11月にかけては、UAW(全米自動車労働組合)によるストライキ長期化が自動車生産に影響を与えたが、24年春に向けて、挽回生産が進む見通し。

 24年は、北米や欧州での高金利や中国経済低迷長期化などが自動車市場に与える影響が懸念されているが、日米欧などの主要自動車メーカーの24年の生産計画は積極姿勢が目立っており、堅調な成長が見込まれている。加えて、車の電子化・電動化の動きは着実に進むため、自動車1台当たりの電子装備率は今後も上昇し、カーエレクトロニクス市場は今後も自動車の生産台数の伸びを上回る成長が期待される。

変革期を迎える

 現在の自動車市場は、「CASE(コネクテッド、オートノマス、シェアード&サービス、エレクトリック)」や「MaaS(モビリティー・アズ・ア・サービス)」などをメガトレンドに、「100年に1度」とされる変革期を迎えている。

 特に「電動化」は、「脱炭素化」の世界的な潮流の中で、各国政府が相次ぎ、CO₂排出規制やカーボンニュートラル目標などを公表。これに合わせて、自動車メーカー各社のxEⅤシフトの動きが加速している。

 最近になりEUでは、これまでのBEV(バッテリーEV)一辺倒から、合成燃料「e-fuel」を使用するガソリン車の取り扱いなども議論されているが、環境対応車シフトの方向性に変化はない。

 また、EVで先行している中国では、主要な中国系EV企業の海外輸出展開も強化されており、世界のEV市場での競争が一段と激化している。

技術が高度化

 ADAS/自動運転技術も一段と高度化している。最近は米国や中国などで自動運転タクシーなどの実用化も進んでいるほか、日本でも最近は自動走行車両の一般道での実証実験などが始まりつつあり、2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)でのプレゼンテーションなどにも期待が高まっている。

 通常のガソリン車では車両1台で3万点前後の部品が搭載される。これに対し、シンプルな構造のEⅤでは部品点数が2万点以下に減少するとされるが、一方、半導体・電子部品に関してはEV化で車両1台での搭載点数が着実に増加。EVと親和性の高いADAS/自動運転技術も、EV化の進展とともに高度化し、電子部品・モジュールの搭載点数を増大させる。

 自動運転の実現には、車外通信性能の高度化や高精度画像認識、高度化車両制御、AIやエッジ処理を含む情報処理技術など様々な技術の融合が必要。電子部品各社は、これらを実現するための要素として、センサーや制御デバイス、通信モジュール、ノイズ対策用部品、撮像系部品、大容量高速伝送デバイスなどの開発を活発化させている。

安全性・快適性

 乗員の安全性や快適性向上のための車の高機能化も、新たな電子部品需要を創出する。最近は、車室内での幼児置き去り事故防止用に、ミリ波レーダーやセンサーを活用したソリューションの提案が進められている。

 将来の完全自動運転車での車室内のビジネスルーム化/リビングルーム化などを視野に、次世代映像・音響システム向けの技術提案にも力が注がれている。