2024.02.23 【育成のとびら】〈20〉女性管理職がもたらすメリットとは 成果・職場環境とも改善アシスト
本コラム18回からは女性管理職の育成に焦点を当て、さまざまな角度から考察している。女性管理職が注目されるのは、生産年齢人口の急激な減少によりますます女性の活躍が求められるようになるとともに、投資家から女性管理職・女性役員への評価が高まっていることなども背景にある。
外部環境の変化に伴い女性管理職の育成が急務になっていることは紛れもない事実だが、実際に女性管理職の育成に取り組むと、組織においてどのような変化があるのだろうか。中原淳氏(東京大学准教授=当時、現・立教大学教授)と当社ALL DIFFERENTが共同で、働く男女7492人を対象に行った大規模調査の中から探っていく。
調査では、男女の管理職にそれぞれ、自身がマネジメントしている職場の目標達成度合いをたずねたところ、「達成できた」「やや達成できた」と答えた割合は男性が54%に対し、女性は63%だった(図1)。
サンプル数の違いはあるが、女性管理職の方が1割近く高い結果となった背景には、市場構造の変化に伴い、顧客目線やスピーディーな現場決定の重要性が高まっている点があるといえる。
多面的な価値提供
例えば家電の場合は、最終購買決定者は女性が多く、マーケティング、企画、設計、生産など、あらゆるフェーズにおいて女性の立場に立った視点が不可欠だと言われている。また、市場の変化が速く、現場の意思決定のスピードがますます重要になる中では、発案や運営だけでなく、判断を担うポジションに女性がいることで、より多面的な価値提供につながっているという声もある。
調査から女性管理職は職場環境の改善においても成果を発揮しているという結果も出た。女性管理職による職場の変化に関する質問では「部下の業務能力が上がった」「メンタルヘルス不調を訴える部下が減った」「人間関係のトラブル発生頻度が減少した」という、良い変化をもたらしている割合が高くなっている(図2)。
市場だけでなく、組織の在り方も大きく変わっており、チームによる成果創出やコンプライアンス(法令順守)の徹底など、管理職には新たな役割が期待されている。組織の在り方が急速に変化する中では、マネジメント領域が特定の属性、特定の価値観に依存することは、企業全体の成長においてリスク要因にもなり得る。
ビジネスの外部環境や組織の在り方の変化に対応するためには、組織のあらゆるポジションにおいて人材の多様性を推進すべきだ。女性だけでなく、外国人、シニアといった、さまざまな属性、価値観、スキルを持った人材が幅広い階層で活躍することで、組織全体の柔軟性は増し、新しい価値の創出がより加速していくだろう。(つづく)
〈執筆構成=ALL DIFFERENT〉
【次回は3月第2週に掲載予定】