2024.04.09 アーム、IoT向けAI半導体発表 性能4倍、トランスフォーマー対応

イートスU85は前世代に比べ性能を4倍に(出所=アーム)

 IoT機器の設計負担を低減するコアストーン320(出所=アーム) IoT機器の設計負担を低減するコアストーン320(出所=アーム)

IoT機器への生成AI搭載も視野に(出所=アーム)IoT機器への生成AI搭載も視野に(出所=アーム)

エッジAIの展望を語るアームの中島氏(9日、横浜市)エッジAIの展望を語るアームの中島氏(9日、横浜市)

 英国の半導体設計大手Arm(アーム)は9日、性能を4倍に高めたAI用半導体「Ethos-U85(イートスU85)」を日本向けに発表した。チャットGPTで注目の技術トランスフォーマーに対応。イートスU85を組み込んだモノのインターネット(IoT)機器を簡単に開発できる製品「Corstone-320(コアストーン320)」も投入する。

 工場自動化(FA)やスマートホーム用のカメラで撮影した画像をその場で解析するなど、エッジAIの需要を見込む。同社日本法人の新横浜オフィス(横浜市港北区)で開いた発表会には応用技術部ディレクターの中島理志氏が登壇。チャットGPTなどで注目を浴びる生成AIについても「将来ダウンサイズ(小型化)が進めば利用可能」と展望を語った。

 イートスU85はAIに必要な並列演算を担うマイクロ・ニューラル・プロセッシング・ユニット(マイクロNPU)で、CPUと組み合わせて使う。積和演算(MAC)ユニットを128~2048並列にでき、前世代の「U65」に比べ性能を4倍に向上。電力効率を20%高めた。AIの根幹となる機械学習の手法は畳み込みニューラルネットワーク(CNN)に加えトランスフォーマーに対応する。前世代と共通の開発ツールを利用でき、顧客が過去の投資を生かせる一方、TensorFlow Lite(テンソルフロー・ライト)やPyTorch(パイトーチ)など流行のAI技術にも対応する。米国のアリフ・セミコンダクターやドイツのインフィニオン・テクノロジーズが採用を決めている。

 コアストーン320はイートスU85にCPU「Cortex-M85(コーテックスM85)」、画像処理用のイメージ・シグナル・プロセッサー(ISP)などを組み合わせて提供。IoT機器の設計負担を軽減する。機器の完成前に仮想環境で動作させる仕組みも用意し、搭載ソフトウェアも並行して開発可能にした。セキュリティ基準としてアームが推進する「PSA」レベル2に対応。PSAを足掛かりに地域、業界ごとの基準に準拠できるようにした。

 生成AIはデータ量や消費電力が大きく、インターネットに接続した大規模な計算機資源を利用するクラウドAI方式が主流。イートスU85やコアストーン320のような末端の電子機器を利用するエッジAI向け製品では性能に課題がある。アームの中島氏も「市場の要望は高い」としつつ「現時点では実装する方法はない」と認める。一方「計算機科学の歴史は小型化の歴史」とも語り、生成AIの改良が進めば大きな需要を産むと期待を示した。