2024.05.10 【やさしい業界知識】複合機

DX支援担うエッジデバイス
法令改正が追い風に

 複合機(MFP)は、オフィスには必ず1台はあり、ビジネスには絶対なくてはならない存在といってもよい。MFPはMultifunction Peripheralの略で、多機能機を意味する。コピーやプリントに加え、ファクス機能やスキャン機能などを持つ。近年は、ビジネスの多様化などに対応、セキュリティー面の強化やクラウドサービス、AI(人工知能)との連携など、進化が著しい。

 ここ数年、複合機の国内出荷台数は、コロナ禍の影響もあり、減少傾向にある。ビジネス機械・情報システム産業協会(JBMIA)がまとめた2023年の複写機・複合機の国内出荷台数は、約45万台だった。ピーク時では年60万台近くを記録していたが、近年は、コロナ禍でテレワークなどの普及によるオフィス需要の停滞、さらにペーパーレス化の流れも需要に影響を与えている。一方、機能の向上もあり、1台当たりの平均単価は上昇傾向にある。

 複合機は、光学、メカトロニクス、精密技術に加え、擦り合わせ技術などを駆使した超ハイテク製品だ。日本メーカーが強く、世界市場の7割から8割を占めている。

市場伸長へ

 今後は、複合機を起点としたソリューション市場が大きく伸びてくる見通しだ。

 働き方改革やDX(デジタルトランスフォーメーション)の高まりが、ソリューション市場の拡大に追い風となっている。世の中の電子化の動きは、複合機業界にとってむしろ好材料。メーカーでは、複合機のスキャン機を活用したOCR連携、クラウドサービスやストレージサービスと連携したドキュメントソリューションなど活発に提案している。

 今年1月からの電帳法の義務化、昨年10月からのインボイス制度など法令改正は、複合機業界にとっても追い風だ。紙の電子化、業務改革の大きな契機になっている。特に人手不足の課題を抱える中小企業では、法制対応はしたものの、DX、業務改革につなげていけるかはこれからの課題。入出力デバイスとしての複合機と電帳法やインボイス制度との連携を契機に、業務フローのデジタル化の進展が期待されている。

 DX化が叫ばれ、企業のDXも進展しつつあるが、中堅・中小企業のDX化は遅れているのが現状だ。

中堅・中小向け強化

 複合機メーカーにとって、中堅・中小企業は主要な顧客基盤だ。DXに対する知識不足やIT人材不足がネックとなっている中堅・中小企業向けに、各社では、ソリューションのパッケージ化など導入しやすいソリューションを強化している。

 複合機は、アナログとデジタルをシームレスにつなぎ、業務のDX支援を担うエッジデバイスとしての位置づけがますます求められてくる。電子化した文書を手軽に閲覧、管理、データ処理することによるワークフロー全体の効率化などへの期待は大きい。

 各社では、サイバーテロなどに対応し、複合機のセキュリティーの強化にも積極的に取り組んでいる。

 また、環境面では、カーボンニュートラル、サーキュラーエコノミーに向けた取り組みも大きな課題だ。各社では、循環型社会実現に向けた環境視点のビジネス戦略を本格化させている。

 本格的なデジタル社会を迎えつつある。紙業務の電子化やクラウドサービスとの連携強化など、複合機の提案価値拡大の材料はそろっている。

(毎週金曜日掲載)