2024.05.16 高齢者に新しい観光体験 「旅介TV」放送開始、東京トラベルパートナーズ

介護施設で実際に行われた視聴会の様子

 東京トラベルパートナーズ(東京都渋谷区)が高齢者向け動画配信サービス「旅介(たびすけ)TV」の放送を1日、開始した。介護、医療、福祉施設向けに視聴者参加型の旅番組などを配信する。

高齢化を背景に、ステイケーションに注目

 自宅にいながら非日常を味わえる新たな観光サービスが広がっている。コロナ禍で人々の交流や移動が制限され、観光需要が大きく減少した影響もあり、新たな旅のスタイル「ステイケーション」(ステイ+バケーション)が注目されている。

 厚生労働省によると、日本の高齢者数は2025年に3657万人(全人口に占める割合30.3%)、55年には3626万人(同39.4%)と推計されている。高齢化が進む中、介護施設や福祉施設のサービス拡充が喫緊の課題になっている。

 こうした状況を背景に、テレビ番組などで見た場所へ実際に行きたいという気持ちにさせることで、交流人口の拡大や旅行消費による地域経済の活性化につなげようとする新たなサービスが始まった。

視聴者参加型プログラム

 旅介TVのコンセプトは「新しい旅の形をつくり、すべての人が旅を楽しめる環境をつくる。」。旅と健康をテーマに視聴者参加型プログラムを展開する。旅番組が中心だが、視聴者が放送中にチャット機能を使って出演者とコミュニケーションを取ったり、クイズや川柳のように視聴者が出演者と一緒に楽しんだりすることができる仕掛けを盛り込み、多彩な番組を届ける。

 スマートテレビやスマートフォンのブラウザーに旅介TVをダウンロードすれば手軽に視聴できる。旅行に行くことが難しい時に、「旅を連れてくる」という新しい発想で、家庭・施設内での旅行体験を提供する狙いだ。介護施設のレクリエーションなどで利用し、施設のサービス拡充を図る。

 全国のCATV各社とも連携し、高齢者が旅する気分を味わえるさまざまなコンテンツを視聴できるようにする。

 12月までに、放送中身体を動かすように促すストレッチ講座で身体機能の改善を目指す「旅介健康チャンネル」や、全国のお祭りを生配信する「旅介お祭りチャンネル」など、合計1000以上の番組を提供する。フランス・パリの様子を生配信する「ONYVA!(オニヴァ)」や参加型旅番組、アーカイブ番組の放送も予定。25年4月からは、大阪・関西万博のパビリオンの様子を毎日生中継する企画も予定している。

住友電工が技術提供  

 東京トラベルパートナーズは22年3月、住友電工、関西イノベーションセンターと協業し、CATV事業者の通信インフラを介して自宅テレビのリモコン操作のみで体験できる参加型のリモート観光ツアーの新たな実証実験をスタート。一般視聴者向けのリモート観光配信サービスとして先月から展開していたが、今月から高齢者向けに特化するとともに、個人宅からでも視聴できるようにした。