2024.05.24 【やさしい業界知識】商業・産業印刷
高い成長性が見込まれる商業・産業印刷市場
デジタル印刷へ期待大
工程の自動化・省力化などDX
プリンティング市場は、複合機(MFP)などのオフィス市場が成熟化する一方で、成長市場として期待されているのが、デジタルプリンティング技術を活用した商業印刷や産業市場だ。複合機やプリンターメーカーが、オフィス市場で培った技術やノウハウを商業・産業印刷市場にも広げている。
ペーパーレス化、Webなど新しいメディアの台頭など急速に市場が変化する中で、短納期、多品種少量印刷対応、また、印刷工程の自動化・省力化など印刷業のDX(デジタルトランスフォーメーション)の面からも、デジタル印刷への期待は大きい。
オンデマンド印刷により、少量多品種化や短納期化が可能なのがデジタル印刷の優位性だ。マーケティング面では、カタログや冊子など少量、個別印刷も可能なデジタル印刷は、大きな武器になる。結果、無駄な印刷もなくなり、コスト面、環境面でもプラスだ。
こうした中、複合機メーカーなどが積極的に提案しているのが、製品戦略に加え、ソリューション提案だ。
富士フイルムビジネスイノベーションでは、「Add value from DX」をコンセプトに、パートナー企業と連携して、DXエコシステムを構築。商業印刷業界とブランドオーナーに向け、「スマートファクトリー」「マーケティングDX支援サービス」などを提案している。
スマートファクトリーは、大量印刷を前提とし、オフセット印刷を中心とした従来の生産環境の課題である①各工程が個別に管理され全体最適の観点を持った工程管理が困難②各業務が熟練技術者に依存(属人化)し標準化が困難③時間と手間を要する工程間作業の可視化・管理が困難―などの解決を目指している。
また、マーケティングDX支援サービスでは、顧客接点(店舗・Webサイト・デジタル広告など)から得られるデータを統合、可視化、分析し、企業のマーケティング領域のDXを支援する。
クラウド活用
コニカミノルタジャパンでも、「創注・受注拡大支援」と「生産性向上支援」の2軸で商業印刷のDX化を推進、印刷業界のビジネス成長と収益力向上に注力している。また、クラウドサービスを活用、プリントメディアとの連動など、印刷会社の営業支援サービスにも力を入れている。
リコーは、印刷業者およびビジネスパートナーとの価値共創に取り組むプラットフォーム「RICHO BUSINESS BOOSTER」を提供し、印刷アプリケーション、生産工程の自動化、省人化などを提案している。
キヤノンは、商業・産業印刷分野を成長分野と位置づけ、戦略強化を加速させている。昨年10月に開催したCanon EXPO 2023で初公開した戦略モデルを、今年から国内外で本格展開している。
デジタル捺染展開
デジタル印刷技術は、デジタル捺染(なっせん)として、アパレル、テキスタイル分野でも導入が進んでいる。エプソンでは、早くからシルク産業の本場、イタリアのコモ地区に技術拠点を設け、グローバル展開している。京セラもデジタル捺染の本格展開を開始した。リコーの包装材へ直接印字する「ラベルレスサーマル」技術は、セブン-イレブンの商品パッケージに採用され、環境負荷低減を実現している。
(毎週金曜日掲載)