2024.06.07 マクセルが新中計、営業利益120億円目指す 注力3分野に350億円投資

全固体電池の用途開拓進める

 マクセルは、新中期経営計画「MEX26」で2026年度に売上高1500億円、営業利益120億円、営業利益率8.0%、ROE(自己資本利益率)10.0%を目指す。今後3年でモビリティー、ICT(情報通信技術)/AI(人工知能)、人/社会インフラの注力3分野に集中投資するとともに、新規で取り組む全固体電池の事業化を進める。注力分野に前中計の2倍以上の約350億円の成長投資を行うことも明らかにした。中村啓次社長は「メリハリをつけて収益性を高めていく」と話す。

全固体電池の量産化

 23年度を最終とする前中計「MEX23」では20年度の事業構造改革の成果の刈り取りを軸に、収益性と資本効率の向上に取り組んできた。プロジェクター事業の縮小や国内コンシューマー向け事業の移管により収益性が改善したほか、新規事業で取り組んだ全固体電池の量産化などの成果もあった。ただ、23年度の売上高は1291億円、営業利益81億円、ROE8.5%と計画未達に終わった。

 同社は、電池とテープの製造で培ってきた「混合分散」「精密塗布」「高精度成形」の量産技術をアナログコア技術と総称。他社にない強みと位置付けて注力3分野に組み入れてきた。新中計では「MEX23を踏まえ、引き続きアナログコア技術を軸に3成長領域を強化する」(中村社長)。

 モビリティー領域では、光学システム関連が顧客の技術転換期による端境期となるため、27年度以降の先行技術の開発と投資を進める一方、耐熱コイン形リチウム電池は、タイヤ空気圧モニタリングシステムの電池で世界トップシェアを維持し3年で20%増収を目指す。塗布型セパレーターもUBEとの連携で拡大させ3年で85%増収を目指す。

 ICT/AI領域では半導体市場に追従していく計画で、薄膜・平滑塗布技術を強みに半導体工程用テープでシェア拡大を目指すとともに、売り上げも3割伸ばす。半導体DMS(設計製造受託サービス)は一貫した生産体制を武器に20%増収を図る。

 人/社会インフラでは、成長領域に集中していく計画。高い信頼性が求められる医療機器向け一次電池は3年で70%増収を狙う。建築・建材用テープは多様な製品展開で同55%増収を計画している。電設工具は、超高油圧技術を生かして異業種市場向けや海外への展開を拡大させ、同25%増収を見込む。

 MEX23で173億円だった成長投資は2倍以上の約350億円に増やす。「顧客の技術課題に貢献できる製品の開発に力を入れていく」(中村社長)。

 新規事業で取り組んできた全固体電池は、前中計で量産化のめどをつけた。新中計期間を第2フェーズと捉え、寿命と耐熱性と容量を進化させながら用途開拓を進める。セラミックパッケージ型全固体電池の用途展開とともに電池モジュールの適用を拡大させる。

 同社では全固体電池の30年度の市場規模を約3000億円と想定しており、シェア10%となる300億円の売り上げを目標としている。30年度までに100億円規模の投資を行い、成長を加速する構えだ。

技術営業の人財拡充

 3注力分野での成長に向けて人財戦略も強化する。マーケティングや市場開拓をする人財に加え、技術営業人財を拡充。市場開拓では海外向けにも力を入れる。社内DX(デジタルトランスフォーメーション)にも取り組み、業務・生産・意志決定の領域における課題解決のための革新を実現し、働き方改革や生産性向上を図る。

 中村社長は「メリハリをつけて注力3分野の成長事業に投資し収益成長につなげていく」と繰り返し、「新事業では全固体に続くテーマを立ち上げていく」と強調した。