2024.06.21 通信各社、宇宙事業を本格化 NTT「新ブランド」/KDDI「共創強化」/ソフトバンク「光無線」

KDDIは共創プログラム「MUGENLABO UNIVERSE」を立ち上げた

宇宙ビジネスの新ブランド「NTT C89」を発表する島田社長宇宙ビジネスの新ブランド「NTT C89」を発表する島田社長

ソフトバンクが開発を進める光無線通信機器の模型ソフトバンクが開発を進める光無線通信機器の模型

 国内通信大手各社が宇宙事業を本格化させている。NTTは新たな事業ブランドを立ち上げ、関連事業を一本化。KDDIはスタートアップと連携して宇宙通信を進化させ2030年には月面での通信実現を目指す。ソフトバンクは空飛ぶ基地局と呼ばれる「HAPS」(成層圏通信プラットフォーム)と低軌道衛星を光無線通信でつなぐ世界初の実証に乗り出した。

 「宇宙ビジネスの統一ブランドを立ち上げ、89番目の新しい星座を作っていきたい」。NTTの島田明社長は3日、宇宙分野の新ブランド「NTT C89」の旗揚げを宣言した。NTTグループ各社の宇宙事業や研究開発などの取り組みを「星」になぞらえ、それぞれをつなげることで「89番目の星座を作る」という思いを込めた。

 静止衛星や観測低軌道衛星、HAPSなどは自社の強みを生かして自前化を目指す一方、通信低軌道はパートナー連携でサービス化を図る方針。島田社長は「強みの技術開発を行いつつ、外部のパートナーとの連携で早くサービスを提供してきたい」と述べ、現状数十億円レベルの売上を33年には「1000億円規模にしたい」と意気込む。

 一方、2021年9月にスペースXと業務提携し、衛星通信網「Starlink(スターリンク)」を活用したサービスをいち早く展開してきたKDDI。5月30日に、スタートアップと大企業が連携して、宇宙通信を活用して地上の課題解決を目指す共創プログラム「MUGENLABO UNIVERSE」を立ち上げた。

 同社は24年中にスターリンクとスマートフォンの直接通信を実現させたい考えで、松田浩路執行役員常務は「28年には月と地球間通信、30年には月面モバイル通信の構築を目指し、宇宙から地球上の生活の変革と社会課題解決に貢献したい」と力を込めた。

 光無線通信を使った技術開発に取り組むのがソフトバンクだ。地上約20キロメートルの成層圏で滞空するHAPSと、2000キロメートルを飛ぶ低軌道衛星を光無線通信でつなぐ世界初の実証に着手する。

 HAPSと低軌道衛星が双方向10ギガビット毎秒で光通信できる想定で、実現すれば世界最速になるという。

 先端技術研究所航空技術開発課の柳本教朝研究員は「これによって多数のノウハウが得られると考えており、より高速かつ安価で量産できるシステムを作っていきたい」と意気込んだ。 (24日の電波新聞/電波新聞デジタルで詳報します)