2020.05.27 【電設資材/関連製品特集】生産自動化需要など新事業領域拡大
工場のスマート化で電設業界のフィールドが広がる
電設(電気設備)業界は、インフラや住宅、オフィスビルなどの電気設備の建設・保守管理を通じて、国民生活の向上や経済の持続的な成長を支えていく役割を担っている。
また、人々の生活の一番身近なところで生活・ライフラインを支え、安全・安心を提供するなど、電設業界が担う役割は重要。
電設業界は変化し続ける社会環境に対応した最新機器や新工法による生産性向上、施工の省力化・効率化と働き方改革の推進により、豊かな暮らしの実現に貢献しようと取り組んでいる。
電設業界の一大イベントとして毎年、東京と大阪で交互に開催され、今年は5月に大阪で予定されていた日本電設工業協会主催の「JECA FAIR(ジェカフェア)」が、新型コロナウイルの感染拡大の影響で中止になった。
JECA FAIRは、電気設備に関する資機材、工具・計測器、ソフト、システムなどの新製品紹介をはじめ、施工技術や施工実績、アカデミックの紹介、電気設備業界の魅力や働き方などを紹介する各種イベントなど、多様な情報を発信する国内最大の電気設備総合展示会として、ビジネスチャンスを創出する重要な場になっている。
同展示会を通じて最新機器や新工法による生産性向上、施工の省力化・効率化などを提案するため、新技術、新製品を発表する出展企業も多い。
今年は開催中止になったが、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い発令されていた緊急事態宣言の解除で、電気設備業界もこれまでの自粛から本格的な事業活動へ転じるものとみられている。
創エネ、省エネ、蓄エネ、スマートグリッドなどをキーワードに太陽光発電、蓄電システム、LED照明、HEMS(ホーム・エネルギー・マネジメント・システム)、BEMS(ビル・エネルギー・マネジメント・システム)、CEMS(コミュニティ・エネルギー・マネジメント・システム)、産業用モーター、産業用インバータ、配電制御機器、配線器具、コントローラ、駆動制御機器、産業用ロボットなど最新の電設製品、システムが市場に投入され、活況を呈していくことが期待されている。
大型再開発事業、物流施設建設、設備更新需要好調
電気を安定的に供給する電気事業、発電から送配電、電気を使用する機器までの一連の電気設備をはじめ、電話設備、防災設備、情報通信設備などを含めた、多様で不可欠な電気設備を社会に提供する電設業界の役割は、ますます重要になっている。
電設・電設資材業界を取り巻く環境は、電力関連投資は抑制が続くが、ここ数年、東京五輪・パラリンピックに伴う首都圏を中心とした大型再開発事業や、インターネット取引の普及に対応した物流施設の建設需要などに支えられ底堅く推移してきた。設備の老朽化に伴うリニューアル工事の需要も旺盛に推移してきた。
日本電設工業協会の15-18年度の電気工事受注高推移を見ても、公共投資が底堅く推移し、民間設備投資もおおむね横ばいで推移してきた。
19年度は米中貿易摩擦により、民間投資にブレーキがかかり、20年度は第4四半期に新型コロナウイルス感染症拡大の影響により景況感が急激に悪化した。
一方で技能労働者の不足感がますます深まり、今後に大きな課題を残している。東京五輪効果の反動が懸念されるが、工場の自動化に伴う電気設備の需要など、業界には新たなフィールドが広がる。
IoT、産業用ロボットなどビジネスフィールド拡大
ビルや工場の電気設備は、電力会社の配電線路から高圧6600Vで受電して、変電設備によって6600Vを低圧三相415V、200V、単相200V、100Vに降圧して、動力幹線・電灯幹線にて負荷に供給される。
受変電設備、自家発電設備、照明設備、動力設備、通信設備、空調、換気、給水、排水、搬送、維持管理などが電設業界のフィールドになる。工場では生産設備を稼働させるために電設業界が担う役割も大きい。
工場の生産現場では生産の自動化が進む。IoT技術を駆使し、生産性を大幅に高める「スマートファクトリー」への関心が高まっている。
工場に配置された生産設備をLANでつないでネットワーク化し、設備間でデータをやり取りすることで、不良生産を自動的に抑えるなど、モノづくりが大きく変わる。
産業用ロボットも導入され、その需要は広がりを見せる。日本ロボット工業会は、会員(正会員、賛助会員)を対象にした統計調査による産業用ロボットの20年1-3月における受注・生産・出荷実績によると、新型コロナウイルスの感染が広がる中で受注額1718億円(前年同期比10.1%増)、生産台数4万5587台(同8.1%増)、生産額1698億円(同4.5%増)、総出荷台数4万7010台(同9.1%増)、総出荷額1719億円(同2.6%増)と伸びた。
国内は出荷台数、出荷額ともに減少したが、輸出は台数3万6333台(同21.7%増)、輸出額1192億円(同8.9%増)と大きく伸ばした。
工場のIoT化や産業用ロボットの分野も電設業界の新たなビジネスフィールドとして成長が期待される。
住宅の電力配線設備
最近の住宅のIT化は目覚ましく、地上波放送、衛星放送、CATV、固定電話、ISDNを利用したインターネットをはじめ、将来的には電力引き込みケーブルを利用したものも研究されている。
ほかにも、住宅のエネルギーの使用をコントロールするHEMS(ホーム・エネルギー・マネジメント・システム)や、CO2を発生しないで発電する太陽光発電など、CO2削減を推進する設備の施工に関わる。
エコキュートなどは、今までの設備よりも大幅にエネルギーが削減でき、発電で発生するCO2を抑えることが可能なため、工事を行うことによって地球温暖化対策に貢献する。