2024.06.28 【やさしい業界知識】電源
あらゆる電子機器の動力源進む
小型化・軽量化・高効率化
各種電子機器において電力を回路に供給する働きをするのが電源(パワーサプライ)。あらゆる電子機器は、動力源として電源部がなければ動作できない。
直流電源を作る方式としては、商用の交流電源から直流に変換するAC-DC変換方式と、ポータブル機器では電池を電源として機能ごとにDC-DC変換する二つの方法がある。現在では、半導体の高速スイッチングにより数十キロ~数十メガヘルツの高周波電力に変換し、制御、整流して所定の直流を得るスイッチング電源が搭載されている。
また、再生可能エネルギーやモーター駆動などでは、交流を出力するインバーターも電源の一種。
電子情報技術産業協会(JEITA)の電子部品グローバル出荷統計によると、2023年度累計(23年4月~24年3月)の電源部品のグローバル出荷額は前年比2%増の2794億円となった。電源部品のグローバル出荷は、19年は米中摩擦激化や中国経済低迷が響き前年割れとなり、20年前半も新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大に伴う企業活動停滞などにより低調だったが、20年後半以降、需要が回復し、23年度まで4年連続で前年比プラスで推移している。
変化する市場
電源の市場は大きく変化している。従来はテレビやオーディオなどの映像・音響機器や白物家電向けの市場が大きかったが、その後、パソコン、サーバーといった情報機器、プリンター、複写機などの事務機器などでの需要が伸び、近年はスマートフォンや産業機器、自動車分野が電源の一大市場を形成している。
現在はスマホをはじめとする電池駆動機器の台頭で、チャージャーの市場規模が大きくなっている。自動車は、xEVをはじめとする電動車の普及が加速し、搭載されるDC-DCコンバーターやインバーター、オンボードチャージャー(OBC)、急速充電器などの生産台数が増加している。今後も、CASEをメガトレンドとする自動車の高機能化進展が、車載用電源の需要を押し上げていく見通し。
産業分野は、スマートファクトリー化、ロボット化、省エネ化などでインバーターが普及しているほか、環境・エネルギー分野では、太陽光発電や風力発電をはじめとする再生可能エネルギー機器、蓄電システムに関連する電源市場の裾野も広がっている。さらに、5G通信基地局や生成AI(人工知能)の普及が促進するデータセンター(DC)市場の急速な広がりが電源市場を押し上げている。
生活家電関連は、インバーターエアコン、LED照明の普及が進展し、関連電源の需要も増加している。
複数技術が融合
電源の技術開発面では、小型、薄型、軽量化および高効率化が基本的な開発の方向性。パワーデバイスではGaN(窒化ガリウム)やSiC(炭化ケイ素)の採用、デジタル制御技術、現行部品からの先端部品への切り替えなど、複数の技術的要素が融合しながら電源技術が高度化していく見通し。(毎週金曜日掲載)