2024.07.19 【やさしい業界知識】小型モーター
自動車電装機器用モーター
幅広い用途の小出力モーター
日系で進む海外生産シフト
モーター(電動機)は、電気的エネルギーを機械的エネルギーに変換する装置。導線に電流を流すと磁界が発生する。この磁気作用を応用してコイルを駆動させることにより、電気エネルギーを機械エネルギーに変換する。
小型、超小型も
モーターは出力別に、大型、中型、小型などに分類される。小型モーターは出力70W以下の小型直流(DC)モーター、小型交流(AC)モーター、ステッピングモーター、その他小型モーターの総称。電子情報技術産業協会(JEITA)では、小型モーターを変換部品カテゴリーの中のアクチュエーターの一つに分類している。出力3W以下のモーターは、超小型モーターとも呼ばれる。
小型モーターの用途は幅広い。AV機器や白物家電、パソコン・周辺機器、携帯端末などの民生機器をはじめ事務機器、通信装置、自動車、産業用ロボット、航空宇宙/防衛関連などあらゆる産業分野で使用され、需要が増加している。
小型モーターには多様な種類がある。DCモーターは、磁石界磁型と巻線界磁型に分類され、前者はブラシ付き、ブラシレス、コア付き、コアレスといった品種がある。ACモーターは誘導モーター、同期モーター、交流整流子モーターなどに分類される。このほか、リニアモーター、超音波モーター、振動モーターなどさまざまな種類がある。
DCモーターの特長は、速度制御が容易で、始動時のトルクが大きいことなどがある。ACモーターの利点は、構造がシンプルで低価格、メンテナンスが容易な点などがある。
ブラシレスDCモーター(BLDCモーター)は、通常のブラシ付きDCモーターと異なり、ブラシと整流子を使用せず、半導体で回転を制御するモーター。ブラシ付きDCモーターと比較し、長寿命・低騒音、安定した速度制御が可能、電磁ノイズが少ない、低消費電力などの特長を持つ。モーター構造により、インナーローター方式、アウターローター方式がある。
材料の見直し
小型モーターの製品開発では、小型・高精度の追求や高トルク、長寿命、低消費電力、低騒音などが追求される。近年は主要材料のマグネット(永久磁石)の見直しによる希土類(レアアース)を使わない代替モーターの開発などにも力が注がれている。
小型モーターは、あらゆる電子部品の中でも日系メーカーの海外生産シフトが最も進んでいる分野の一つ。生産の全量を海外に移管済みのメーカーも少なくない。国内生産は医療機器向けや航空宇宙関連などの特殊用途に限定しているケースが多い。
なお、JEITAの分類によるアクチュエーターの対象製品には、このほかVCM(ボイスコイルモーター)やソレノイドなどがある。(おわり)