2024.07.24 【TECHNO-FRONTIER特集】製品別動向

車載イーサネット用コモンモードフィルター

5GやCASEで重要性高まる

ノイズ対策技術

 電子機器・システムの高機能・高性能化に伴い、ノイズ対策技術の重要性が一段と高まっている。ノイズを出さない、ノイズに耐えられる製品の開発のため、ノイズ対策部品の技術開発が活発化しており、TECHNO-FRONTIER2024では、「EMC・ノイズ対策技術展」を中心にノイズ対策のための最新製品・技術が広く紹介される。

 5Gは高周波帯域を使用することから、マテリアルの高周波対応が必要になる。5G通信は、5Gスマートフォンなどの専用端末だけにとどまらず、自動車や製造装置など、あらゆる産業分野に波及するため、超小型タイプから大型品までさまざまなノイズ対策部品が要求される。電子部品各社は、これらをターゲットに、新製品開発を加速させている。

 スマホでは、小型のボディーに多くの機能が搭載されるため、隣接部品間の電波干渉の対策を施すことが重要。利用周波数も複数化し、さらに5G/ミリ波と高周波化が進むため、より高度な対策が必要となる。

 スマホでノイズ対策用に多く利用されているのがフェライトチップビーズ(フェライトビーズインダクター)。既に0402サイズの超小型品が量産化されている。

 不必要なノイズ成分となるコモンモードを除去するコモンモードフィルター(CMF)は、スマホやウエアラブル端末向けに、ノイズ除去効果を大幅に向上させた0403サイズの高速差動伝送用薄膜コモンモードフィルターなどが量産化されている。ESD対策用に、超小型サイズの積層チップバリスターの商品展開も進められている。

 自動車は、CASEの進展に合わせ、ECUの搭載点数が増加し、機器間を接続するインターフェースにおけるノイズ対策が必要不可欠。特にADAS/自動運転技術の高度化に必須の車載センシングカメラやミリ波レーダー、LiDAR(ライダー)などは誤動作が許されない。

 最近の自動車では、車載イーサネットの搭載が進展し、さらに自動車ネットワークアーキテクチャーは、従来のネットワーク構造から、ドメインアーキテクチャー、さらにゾーンアーキテクチャーへと進化していく見通し。

 これらの動きに対応し、ライン間容量を低減し、効果的にコモンモードノイズを除去する車載イーサネット用コモンモードフィルターなどの製品開発が活発化している。EV(電気自動車)などの電動車のモーター駆動系も強固な対策が求められている。

 産業機器分野では、モーター駆動、インバーターの普及などによって、ノイズ対策の重要性が一段と高まり、コモンモードチョークコイルの搭載が広がっている。

 コモンモードチョークコイルは、小型で高減衰量を得るためにコアとして使用されるフェライトの高性能材質の開発が進展している。

成長分野に照準、製品開発を支援

電源技術

導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサー

 電子機器の高性能化や高効率化ニーズの高まりを背景に、電源技術が高度化している。パワー系電子部品各社は、自動車、産業機器、モバイル端末などの成長分野に照準を合わせ、マテリアル、プロセス、評価技術を高度化させながら、電源の新製品開発をサポートする。TECHNO-FRONTIER2024の「電源システム展」では、さまざまな企業が、最新の電源技術やパワー系デバイス技術を広く紹介する。

 自動車分野では、電動車の台頭で、モーター制御のためのインバーター、DC-DCコンバーター、車載充電器などの開発が加速している。振動、衝撃、温度などの耐環境性能向上や小型・軽量で高効率などが求められる。また、ADAS/自動運転技術の高度化に伴い、ECUの搭載が増加し、その電源回路の小型・高信頼性化も強く要求されている。

 太陽光発電パワーコンディショナーには絶縁型と非絶縁型があり、従来はアナログ制御の非絶縁型が多かったが、最近ではDC-DCコンバーターの制御にデジタルを用いた技術が採用され、小型、軽量、高効率、高信頼でコストパフォーマンスに優れた製品が増加している。再生可能エネルギーと蓄電システムにおける直流給電に対しては、1台で低電圧と高電圧を双方向に昇降圧できる高効率な絶縁型の双方向DC-DCコンバーター開発が進展している。

 スマートフォンやIoT端末などの分野では、さまざまな半導体デバイスを駆動するための超小型のDC-DCコンバーターモジュールが搭載される。

 電源を構成する電子部品の小型・低背化技術も進展している。スイッチング素子や整流素子は、ハイパワー化、高耐圧化に向けて、シリコン(Si)に代わり、SiC(炭化ケイ素)やGaN(窒化ガリウム)を用いたパワー素子の開発が活発化。SiCデバイスやGaNデバイスは、シリコン製に比べ耐高温・高電圧特性や大電流特性に優れ、電力損失の大幅な低減が可能。モジュールの軽量・小型化と高効率化を実現するパワーデバイスとして注目されている。

 第三の次世代パワー半導体として酸化ガリウム(Ga₂O₃)パワー半導体開発も進む。

 アルミ電解コンデンサーは、小型化、長寿命化、高耐熱化、高電圧化の追求が進展。最近は、需要が急増する導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサー(ハイブリッドコンデンサー)の新製品開発や生産能力増強の動きも活発化している。