2024.07.25 【半導体/エレクトロニクス商社特集】エレクトロニクス商社、半導体市場回復の遅れを懸念

商社の枠を超えた取り組みに関心が集まる(写真はRYODENの開発拠点)

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枠組み超える取り組み活発

M&Aの動きにも注目

 半導体市場におけるサプライチェーンの在庫調整、中国市場の停滞などがエレクトロニクス商社の経営に大きな影響を与えている。そうした中、従来の枠組みを超える取り組みが加速し、M&Aの動きも注目を集める。今後のエレ商社業界の動向を占う取り組みが進展している。

 2024年度通期決算の業績では全体的に保守的な予想が目立った。半導体市場におけるサプライチェーンの在庫調整局面を踏まえている。23年度通期決算の発表時では調整局面の回復期を24年度後半に据える見解が大勢を占めた。

 半導体の種類、用途は幅広いが、総じてサプライチェーンの在庫は過多。その調整は進展中だが、問題になるのはスピード感にある。下半期に回復とはいえ、その始まりが10月になるのか、年明けになるのか、あるいは年度末になるのかで業績に与える影響も変わってくる。

 第1四半期(4~6月)を終えた時点でエレ商社業界には回復期の遅れを懸念する声が出始めた。半導体・電子デバイスの用途によっては在庫調整の進展を実感するとの声もあるが、経営に与える影響が大きいため、厳しめに捉える傾向が目立つ。各社は従来以上にさまざまな収益機会を捉えていく構えだ。

東南アへシフト対応

 また、中国市場の低迷により、企業が東南アジアにシフトする動きをフォローする。タイやベトナム、マレーシア、インドネシアなどへの視線は熱く、インド市場の動向にも配慮する。一方、中国の内製化への動向などを視野に入れつつ、抜本的な対策、海外戦略の見直しを検討する動きも出ている。

 エレ商社の経営環境に厳しさがある中で、各社はソリューション営業を強化している。中でも〝エレ商社の枠〟を超える動きに注目が集まる。

 RYODENは「事業創出会社」への変革を加速している。2月にはオリジナル製品群の事業ブランドを立ち上げて案件発掘を強化した。新技術の開発・応用実証拠点も開設し、パートナーとの共同事業も進めていく。

 東京エレクトロンデバイス(TED)はメーカー化への取り組みを一層進める。ウエハー検査装置事業の強化、TED長崎の製造ラインの強化などを軸にプライベートブランド事業を拡大する。

 再編の動きも注目される。

 レスターは1月、都築電気から都築エンベデッドソリューションズ(現レスターエンベデッドソリューションズ)など4社を買収し、完全子会社化した。

 マクニカは株式公開買い付けにより、3月にグローセルを特定子会社化。改めて業界トップの存在感を示す。

 4月にはリョーサンと菱洋エレクトロが経営統合し、リョーサン菱洋ホールディングス(HD)が発足した。両社はHDの子会社としてシナジー効果を追求していく。両社はオーナー系ではなく、大型の対等な経営統合として注目を集める。

 国内のエレ商社業界の規模は約4兆円とみられる。日本半導体・エレクトロニクス商社協会(DAFS)の会員数は42社(24年5月現在、賛助会員を含む)、上場企業は20社超。業界規模に比べてプレーヤーの多さを指摘する声があり、企業規模の拡大に向けて再編が進む可能性がある。