2024.10.08 「できない」を「できる」に テクノロジーで障害者支援、“日本発”ものづくりでスタートアップが存在感
Raise the Flagが展示したシンクレオの試作機
テクノロジーの力で障害者を支援しようとする製品開発が広がりを見せている。視覚や聴覚に障害のある人の行動範囲を広げたり、スムーズな会話を実現したりすることに挑むスタートアップが登場。「できない」を「できる」にする“日本発”のものづくりが、障害者だけでなく、介護現場でも活躍しそうだ。
東京ビッグサイト(東京都江東区)で今月開催された「国際福祉機器展(H.C.R.)」。出展したスタートアップ2社の製品が会場の話題をさらった。
「視覚障害があっても何かに挑戦できるようにする」。そう力を込めるのは、Raise the Flag(香川県高松市)の中村猛CEOだ。
2017年に創業した同社は、音と振動を使って周囲の状況を伝える視覚障害者向けウェアラブル機器「SYNCREO(シンクレオ)」の試作機を展示した。
シンクレオは、カメラ付きグラスと情報を処理する本体で構成する。スマートフォンのアプリと連携していなくても、空間の状態や対象物の形、カメラで認識した色などを音と振動でリアルタイムに伝えることができる。スマホと連携すれば、テキストの読み上げのほか、遠隔地のサポーターに映像を見てもらいながら行動することなども可能になる。
同社が目指すのは、視覚障害者が日常生活でやりたいことに挑戦できるようにすることだ。「食器の配置がわからず、カフェで友人と食事ができない」など、視覚障害が行動の不安につながる事態を減らし、新たな行動に移せるようにすることを後押しする。
聴覚障害者のスムーズな会話を支援する機器を展開するのが、ピクシーダストテクノロジーズだ。リアルタイム字幕・翻訳ディスプレー「VUEVO Display(ビューボディスプレー)」と、発話内容を360度全方向から集音するマイク「ビューボ」を出展した。
ビューボディスプレーは、ビューボと専用アプリが連動し、ジャパンディスプレイが開発した透明ディスプレーの両面に字幕を表示する仕組み。お互いの顔を見ながら会話できるため、良さを実感しやすいという。100カ国以上の翻訳にも対応し、発話者に合わせて表示する言語も面ごとに変えられる。
聴覚障害者の支援に加えて、介護現場への導入も目指している。知財・法務・広報グループ広報部の山田泰裕氏は「介護現場は、会議などで細かな数値を記録することもありニーズがある」と強調。介護現場は、さまざまな言語を話す従業員が働いている。ビューボを活用し聞き分けながら翻訳することで、従業員間のコミュニケーションの壁を低くし、働きやすい環境作りにつなげたい考えだ。