2024.10.11 【育成のとびら】〈35〉内定者が抱える気持ち 「期待」より「不安」が上回る

 10月に入り、多くの企業で内定式が執り行われている。現在、学生の就職活動は「超売り手市場」と言われ、内定承諾後に入社を辞退するケースもあるといい、人事部門は内定式後でも気が抜けない状況になっている。

 そのため、新卒採用を実施している企業にとって、いかに内定者の不安を払拭し、エンゲージメント(愛着・忠誠心)を高め、入社への前向きな期待を醸成するかが課題となっており、内定者への支援の重要性が一段と高まっている。

 特に昨今の内定者は、子どもの頃からインターネットが当たり前の環境で育ったデジタルネーティブだ。加えて新型コロナウイルスのパンデミックにより、学生時代にリアルなコミュニケーションが制約されてきた、いわゆる「コロナ世代」でもある。そのため、仕事に関する価値観もほかの世代と異なると言われており、育成方法のアップデート(見直し)が求められている。

 そんな彼らは、内定期間中に、入社に向けてどのような感情を抱き、どのようなサポートを会社に求めているのだろうか-。当社ALL DIFFERENTとラーニングイノベーション総合研究所が2023年10~12月に行った意識調査の結果から、3回にわたって探っていく。

 調査でまず「社会人になるに当たり、どのような気持ちが強いか」という質問を内定者404人に投げかけたところ、最も回答割合が高かったのは「不安、心配な気持ち」で78.7%だった(図1)。次いで「期待感」(46.2%)、「うれしさ、楽しみな気持ち」(42.7%)、「焦り」(20.8%)、「実感が湧いていない」(19.1%)となった。

能力・成果に不安

 入社前の感情として、8割近くが「不安・心配」を抱えていることが明らかになった。次に、具体的にどのような不安があるか聞いたところ、「自分の能力で仕事についていけるか」が65.8%で最多だった(図2)。

 次いで「しっかりと成果を出せるか」が55.1%となり、「先輩・同期とうまくやっていけるか」(46.2%)、「上司とうまくやっていけるか」(41.9%)、「生活リズムの変化に慣れることができるか」(31.8%)が上位に上がった。

 仕事の能力や成果に関する内容が上位となった背景は、コロナ禍だった学生時代はオンラインでの学習経験が多く、実際に働くイメージが湧きにくい点や、学生から社会人という大きな転換点のはざまで、自分の存在価値を仕事で発揮できるか、という不安が生まれていることなどが考えられる。

 内定者が「仕事にしっかりついていきたい」「成果を残したい」という高い意欲を持っているがゆえに、「実現できないかもしれない」という不安が高まっている可能性もある。

 こうした不安を抱えている内定者に対し、何をすべきだろうか。

 企業側は内定者が入社した後に自分自身が成長していくイメージを持てるよう、入社前に身に付けるべき知識・スキルを学ぶ場を整え、支援の在り方などを丁寧に説明することが不可欠だ。これにより内定者は仕事の能力や成果の不安が減り、入社への期待の醸成につながるだろう。(つづく)

 〈執筆構成=ALL DIFFERENT〉

 【次回は10月第4週に掲載予定】