2024.11.15 【5G関連部品特集】製品別動向
高速差動伝送用小型薄膜コモンモードフィルター
超小型チップ搭載率が一段と上昇
回路部品
5Gスマートフォンは、高密度化に伴い、内蔵される回路部品は超小型チップ部品の搭載化率が一段と上昇している。
最近のスマホは、ディスプレーの大画面化で端末サイズが大型化しているが、高機能化と内蔵バッテリーの大容量化も進んでいるため、プリント配線板はより微細化されている。このため、チップ部品には高い性能と一層の小型・低背化の両立が要求されている。
積層セラミックコンデンサー(MLCC)は、高級機では端末1台に1200個以上が搭載され、チップ抵抗器も400個内外が実装される。これらは静電容量や抵抗値、定格電力、定格電圧などにより、各種サイズが混在している。
高密度実装化を図るため、小型で大容量のMLCC、小型で高耐圧のチップ抵抗器の使用が増加し、0603/0402サイズなどの超小型チップの搭載比率が上昇している。
さらに、今後の需要拡大が見込まれるAI(人工知能)機能を搭載したスマホでは、MLCCなどの員数はさらに増加することが予想されている。
スマホのノイズ対策は、高密度実装化により、隣接する部品間が狭隘化(きょうあいか)することで複雑化しており、0402サイズフェライトビーズなどの採用が進んでいる。信号伝達の高周波化、高速化により、高速差動ノイズ対策も重要となっている。その対策として、LCノイズフィルターが使用される。積層LCタイプに加え、薄膜LCタイプも開発されている。
水晶デバイスは、5Gスマホ向けにパッケージの小型・薄型化が進展。温度センサー内蔵水晶振動子は、1612サイズで厚み0・45ミリメートルなどの超薄型品が開発された。さらに1210サイズへと小型・薄型化技術が進む。
小型・薄型化や高速伝送化など
接続/変換部品
接続部品メーカー各社は、5Gスマートフォンなどのモバイル端末向けに、小型薄型化や高速伝送対応、急速充電対応、使い勝手の良さなどを追求した製品開発を活発化させている。
内部接続用コネクターは、低背・狭ピッチ・省スペースの基板対基板用やFPC接続用コネクターの開発競争に拍車がかかり、嵌合(かんごう)高さ0.5ミリメートルの0.35/0.3ミリピッチ基板対基板コネクターや、シールド付きFPCコネクターなどのラインアップ拡充が進む。FPC接続用は、0.25/0.2/0.175ミリピッチ品のほか、0.15ミリピッチの超ファインピッチ製品も量産化が進んでいる。
5Gスマホ向けに、優れた高周波特性かつ小型のマルチRF対応基板対基板コネクターなども開発されている。
コネクター業界では、スマホの5G化は、アンテナ用コネクターなどの搭載増につながるものとして期待されている。ミリ波帯を視野に、32ギガbps対応小型同軸ケーブルコネクターなどの開発も進む。
電源用コネクターでは、スマホ内蔵バッテリーの大型化やパワーマネジメントの高度化に向け、電流容量15A対応などの大電流対応電源用基板対基板コネクターなどが製品化されている。
デジタルインターフェース用コネクター開発では、急速充電用給電規格への対応や、USB4(最大データ転送速度40ギガbsp)対応、さらに次世代のUSB4バージョン2.0(同80ギガbps)などの高速通信規格に対応した製品開発が進んでいる。
高級スマホでの防水要求の高まりに対応し、高度な防水技術を施した防水ジャックや防水インターフェースコネクターの技術開発も活発化している。
変換部品は、スマホ同梱(どうこん)用のワイヤレスイヤホンの開発やMEMSマイクロホンの超小型・高音質化が追求されている。
小型基地局向け高密度実装に対応
5G基地局用部品
5G通信基地局用部品の技術開発も進展している。5Gで多用される小型基地局装置(スモールセル)の内部搭載用に、高密度実装に対応した高性能な電子部品開発に力が注がれている。
水晶デバイスでは、高密度実装に対応し、高温・多湿の外部環境変化に対しても安定した動作が可能で良好な位相雑音特性を有するOCXO(恒温槽付き水晶発振器)などの開発が進む。OCXOを構成する発振回路、温度制御回路などの全てを1チップに収めた専用ASIC開発により小型化を図るとともに、高Q原石(不純物が極めて小さい高安定用の人工水晶原石)による小型SC-cut振動子開発により、高安定・低雑音が図られている。
コンデンサーは、通信市場での大容量製品への要求に対応するため、チップ形導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサー(ハイブリッドコンデンサー)の大容量製品のラインアップ拡充が進展している。
ハイブリッドコンデンサーは、電解質に導電性高分子と電解液を採用することで優れたESR特性に加えて高い耐熱性を維持し、かつ電解液による酸化皮膜修復性を持つことで、高い信頼性を実現している。
導電性高分子の利点である良好な低ESR性能、高温耐久性能などの高い信頼性により、基地局やAI(人工知能)サーバーなどの用途でも採用が増加している。
ハイブリッドコンデンサーメーカーでは、既存製品に比べて大幅な大容量化、高リプル電流化を図ることで、機器の性能を維持しつつ製品サイズや員数を低減可能な新製品の開発・提案に力を入れている。
コネクターでは、5G基地局用に、防水小型光インターフェースコネクターや、45ギガヘルツ対応高周波同軸コネクター、放熱ニーズに対応するFAN用フローティングコネクターなどが提案されている。