2025.01.09 【電子部品総合特集】 電子部品物流企業 サプライチェーンを強化
電子部品物流業界では、自動化を追求した新倉庫の建設を進めている(アルプス物流の2024年に完工した愛知県小牧市の新倉庫)
ASEANでの物流網整備に力
エレクトロニクス産業のグローバル化が進む中で、電子部品企業には、顧客へのタイムリーな製品供給が求められる。特に近年は、米中摩擦激化や地域紛争などの地政学リスクの高まり、激甚災害増加への対応などから、サプライチェーンの重要性がより意識されている。日本ではドライバー不足による物流逼迫(ひっぱく)も深刻化している。このため、電子部品メーカーや商社は、調達、生産、物流の見直しによるサプライチェーン強靭化(きょうじんか)を推進。電子部品物流企業は、物流品質向上の追求とともに、より付加価値の高い物流サービスの提供に努めている。
電子部品メーカーが受注から納品までのトータルリードタイム(L/T)を短縮するには、試作・設計開発、部材調達、生産、物流など各要素での個別L/T短縮に加え、これらを一元的に捉えた最適な管理システムの構築が不可欠。
短納期対応を充実
IT・エレクトロニクス業界や自動車業界のグローバルユーザーのアジア生産拡大に対応するため、部品各社は中華圏やASEANでの物流体制を強化。倉庫からの直送による短納期対応を充実させている。
特に最近は、チャイナリスク対応として中国からの生産移管が進むASEAN域内での物流ネットワーク整備に従来以上に力が注がれている。同時に、中国での地産地消要求も一段と強まっているため、中国市場向け製品供給体制拡充も重視される。また、自動車業界などの地産地消対応として、インドや北米、欧州などでの物流体制構築にも力が注がれる。
2020年以降の新型コロナ感染拡大時の世界的な移動制限やロックダウンの経験も、こうしたグローバルでの地域完結型の体制作りを促進した。
ここ数年のエレクトロニクス市場では、21年以降、世界的な半導体不足が深刻化するとともに、21年から22年前半にかけて世界的な物流逼迫も深刻化。電子部品物流でも、海上輸送費や航空輸送費が一時は極端に高騰した。22年後半以降は、物流逼迫状況が落ち着き、23年には、航空輸送費や海上輸送費も低下したが、一方で、ガソリン価格の上昇や人件費上昇などより、物流コストは高止まりが続いている。24年は、物流の「2024年問題」も話題となった。
このため、部品メーカーは、物流体制の見直しや在庫政策の変更、ディストリビューターとの連携などを通じ、物流L/T短縮へのさまざまな施策を進めている。
電子部品産業では、物流業務における環境/サステナブル対応やセキュリティーの向上も一段と重視されている。倉庫保管時や配達時に高度な温湿度管理や、省エネ/脱炭素化を考慮した配送、トレーサビリティー機能の充実による誤出荷の徹底防止などが追求されている。
電子部品物流サービス企業では、こうしたニーズに対応し、国内外物流ネットワークの拡充や輸送ルートの最適化、荷物取り扱い技術の高度化、IT活用による「物流の見える化」、環境/セキュリティー対応などを強化し、サービスの高付加価値化を追求する。
メニューも拡充
電子部品物流は、JIT(ジャスト・イン・タイム)、少量・多品種、少量・多頻度、多様な梱包(こんぽう)形態、専用納品書対応などさまざまな特色がある。物流企業はこれらに対応した最適なサービスを強化し、VMI(ベンダー・マネジメント・インベントリー)倉庫の拡充、JIT納入、キットでのJIT納入といったサービスメニュー拡充を進めている。
人手不足対策として、物流工程自動化・省人化にも力が注がれ、省人化機械内製化などに取り組む物流企業もある。