2025.01.09 水中で2ギガの無線通信 競合の20倍高速、京セラがCESで披露

天面に付いているのがレーザー光を使った通信モジュール

青色レーザーによる水中無線通信のデモ。泡を発生させて速度が落ちる実演も青色レーザーによる水中無線通信のデモ。泡を発生させて速度が落ちる実演も

電子ミラー新型も提案電子ミラー新型も提案

 【ラスベガス(米ネバダ州)=CES取材班】水中での無線通信が競合の20倍高速――。青色レーザーを使い、2ギガバイト秒という水中での高速データ伝送を実現した京セラが、世界最大規模のテクノロジー見本市「CES 2025」で、実演により技術力をアピールしている。水中150~200メートルまで通信でき、2027年ごろの実用化を目指している。

 「有線の光ファイバーは水深が深くなると重くなり自由度が低くなる。高速通信としては音波も現実的ではない」。そう語るのは、光伝送事業開発部責任者の西川一美氏だ。

 水中の高速無線通信は、海中にある石油パイプラインの状況を画像で確認する際などの利用を想定する。海中で写真を撮影し、海上にある船舶に無線通信で送信するといった形だ。用途はニッチだが、技術の進化で4K・8Kと解像度が高まる中、それに伴うデータ量の増大に対する高速伝送ニーズは「確実にある」(西川氏)とにらむ。10ギガバイト秒の高速通信を目標に開発を推進している。

 この技術を支えているのが、20年11月に京セラが買収を発表した米SLDレーザーのGaN(窒化ガリウム)を基盤とするレーザー光源技術だ。SLDレーザーは、青色LEDの開発でノーベル賞を受賞した中村修二氏が共同設立した会社。水中無線の高速化を模索する中、買収したSLDレーザーの技術に着目。直進性の高い青色レーザーの応用により水中における2ギガバイト秒の高速通信を実現した。

 ただ海は、塩分濃度やプランクトンの存在などさまざまな不確定要素が絡み合っている。泡も速度が落ちる要因になるため、「海に合わせて最適なパラメーターに設定し、高速通信を実現できるようにしている」(西川氏)という。

 実際、CESでの実演では、水中に泡を発生させ、通信速度が落ちるデモを披露している。それでも通常実測値で約1.8ギガビット秒であるのが1.5ギガバイト秒前後に落ちる程度。100メガバイト秒という競合他社の速度に対してはるかに高速だ。

 京セラは、水中無線通信だけでなく、車載用途として今回初めて空中ディスプレーを提案したほか、後方確認に使う電子ミラー新型なども展示した。