2025.03.27 「AIアプリ×専門家」で失語症者に寄り添う ことばの天使がリハビリ支援

石渡プロジェクトマネージャー

 言語の表現などに障がいが生じる失語症者が手軽にリハビリできる――。オンライン会議などを活用して言語のリハビリを支援することばの天使(大阪市都島区)から、そんなサービスが登場する。

 AI(人工知能)を生かすアプリに言語聴覚士を連携させたハイブリッド型の仕組みが特徴で、9月から本格販売する予定だ。

 クラウドファンディングを経て本格提供するサービスは「Speech Link(スピーチリンク)」。自宅や外出先でリハビリできるよう支援するアプリに、専門知識を持つ言語聴覚士のサポートを組み合わせた。

 具体的には、インストール不要のウェブアプリを用意。アプリ利用者は、スマートフォンやタブレットなどの身近な端末で、AIにアクセスし対話する。対話形式の一つが「宿題モード」で、言語聴覚士とやりとりしテーマを決める。例えば、「自己紹介」を設定すると、関連する話題がAIから次々と振られてくる。「フリートークモード」も搭載しており、自由な会話も可能だ。

 失語症とは、脳卒中や頭部外傷などにより言語脳が損傷して起こる後遺症の一つ。「聞く・話す・読む・書く・計算」が困難となる。潜在的な失語症者は国内に約50万人いると推測されている。

 プロジェクトマネージャーの石渡達也氏も、自身が脳出血による失語症に苦しんだ当事者だ。失語症者から「リハビリの頻度を上げたい」「退院後も継続的にリハビリを行いたい」といった要望が挙がっても、慢性的な聴覚士の不足などが原因でニーズに追いつかないという課題を抱えていた。

 言語聴覚士は、言語のコミュニケーションに問題を抱える人の言語や聴覚などの訓練を担うリハビリの専門職だ。現在、有資格者が4万2000人弱と、同じリハビリ職である理学療法士の5分の1以下にとどまる。

 そうした現状を踏まえて石渡氏は、自費による言語リハビリの可能性を探る中、AIと専門職を掛け合わせることを思いついた。開発したサービスを通じ、言語聴覚士の不足問題の解決につなげることにも意欲を示す。

 「スピード感のあるAIの発達を上手く取り込んで、困っている人たちを助けることに使っていきたい」と石渡氏。技術と人の両輪で失語症者に寄り添い続ける同社の挑戦に、注目が集まりそうだ。