2025.04.22 3代社長の“懐刀” カシオ新社長の高野氏 「実力主義が徹底される評価制度に」
新社長に就任する高野氏(右)と現社長の増田氏
カシオ計算機は22日、高野晋常務執行役員CFO(最高財務責任者)(64)が社長に昇格する人事を発表した。増田裕一社長(70)は顧問に、樫尾和宏会長(59)は代表権のない会長として続投する。増田社長は2023年の就任からわずか2年での交代となるが、事業構造改革を進め成長軌道に乗せるめどが立ったことから新経営陣にバトンを渡すことを決めた。6月27日の定時株主総会後に就任する。
新社長に就任する高野氏は入社以来、財務畑を歩み、現社長も含め3代の社長とともに財務関連の側近として経営に携わってきた。直近はCFOを務め、増田氏とともに構造改革に取り組んでいた。同日、東京都渋谷区の本社で会見した増田氏は「現状はROE(自己資本利益率)が厳しいため、収益力を強化し、かつてのカシオの成長力に戻していきたい」と述べた。
今回の社長交代は、構造改革を終え事業基盤が整ったことも背景にある。増田氏は、創業家の樫尾家以外で初の社長として23年4月に就任したが、ウクライナ戦争や中国経済の低迷など世界市場の変化で厳しい経営環境に立たされた。この2年は事業ポートフォリオの見直しと、人員構造の適正化、組織風土改革に取り組んできた。
今年度は中期経営計画の最終年度になる。増田氏は「構造改革の成果も出てきたため、新たなスタートという位置づけで交代を決めた」と述べた。
高野氏は、戦略的資本配分に基づく成長軌道の確立や、さらなる経営基盤の強化、風土改革に基づく人財戦略の推進――の3つの重点方針を掲げた。競争力のある時計と教育事業の再成長に向けて資源を重点配分するとともに新規事業創出にも取り組んでいく。
経営基盤の強化では、取締役の構成を11人から8人に変更するとともに社外取締役比率を50%、女性比率を25%にし、監督機能を強化していく計画だ。人財を重視し、実力主義が徹底される評価制度の導入を図っていく。
今回の人事では樫尾会長の代表権が外れるほか、樫尾哲雄常務執行役員も退任する。「監督機能と、監督と執行の分離の強化が目的になる」(高野氏)といい、持続可能な経営を加速させる考えだ。
【プロフィル】高野晋(たかの・しん) 1961年2月26日生まれ。64歳。慶應義塾大学経済学部卒。1984年4月カシオ計算機入社。07年11月経理部長。09年12月執行役員財務統轄部長。15年6月取締役 執行役員財務統轄部長。21年4月取締役常務執行役員CFO(現職)