2025.05.08 「アジャイルな時代には不適」 NTT、2.4兆円でNTTデータGを完全子会社化

握手を交わすNTTの島田社長(左)とNTTデータグループの佐々木裕社長=8日、東京都千代田区

NTTデータグループの目指す姿NTTデータグループの目指す姿

 議論に時間がかかりすぎる。今のアジャイルな時代には不適――。NTTが8日、傘下の中核企業であるNTTデータグループを完全子会社化する方針を明らかにした。複雑な資本関係や意思決定プロセスの課題を解消し、海外事業の成長を加速するのが狙いだ。完全子会社化に向けたTOB(株式公開買い付け)の総額は約2兆3712億円に上る。

 「意思決定のスピードが求められるグローバル競争の中では、今の資本関係では限界がある」。同日、記者会見したNTTの島田明社長は、完全子会社化の狙いについてこう説明した。

 NTTは、5月9日から6月19日までTOBを実施する。買付価格は1株あたり4000円。2024年9月から完全子会社化の検討を始め、12月から正式な協議に移っていたという。

 特に、22年の海外事業統合後、NTTデータグループ内のグローバル子会社「NTTデータインク」でも、NTTとNTTデータの出資比率や、データセンター事業に関わる関連会社間の複雑な資本関係が意思決定の遅れを招いていた。

 完全子会社化を機に、グローバルソリューション事業の強化やリソース連携、意思決定の迅速化を柱とした取り組みを推進する。北米を中心とする海外事業の拡充やAI(人工知能)技術を活用したサービス、高度なデジタルガバナンスを展開するほか、世界第3位のポジションにあるデータセンター事業の拡張に注力。NTTグループ全体で成長投資を加速させる。

 法人営業と研究開発の融合も進める。NTTデータのソフトウエアとNTTの顧客基盤を組み合わせ、大手企業から地方自治体まで統合的なソリューション提供を目指す。研究開発分野では、独自開発した生成AI基盤「ツヅミ」や次世代型データセンターの開発に向けた連携も進める。

40年で事業構造が大きく変化

 島田社長は、NTTグループの事業構造の変化にも言及。かつて収益の85%を占めた固定電話事業は今や1割強にとどまり、デジタルやAI、クラウド基盤などが事業の主軸となっている。島田社長は「今後も環境変化に対応し、グローバル競争で勝ち抜く体制を築く」と語った。

 急速に普及する生成AIについては「データセンターの成長率は年15~20%とされるが、AIによってさらに加速している。われわれがポジションを確保しなければ、あっという間に置いて行かれる」と述べ、今回の完全子会社化が将来を見据えた経営判断であることを強調した。